京都市中京区にある、マンガの博物館として有名な京都国際マンガミュージアム。例年「京まふ」会場の一つであり、マンガファンの聖地ともなっています。自由に手に取ることができるマンガはなんと約5万冊!ですが、今回注目する「研究閲覧室」では、その5倍の約25万点を読むことができるんです!!利用条件は、18歳以上の研究、調査を目的とした方とありますが、実は「こども時代に読んだマンガをもう一度読みたい!」という目的で来る方も多いそうです。一体、どんな場所なのか、どんな本があるのか…。
研究閲覧室は、3階に上ってまっすぐ進んだところにあります。部屋の窓からは芝生の広場も見えます!
今回は、マンガミュージアムの広報担当の中村さん、資料担当の渡邉さん、大谷さんにお話を伺いました。
では、研究閲覧室についての簡単な紹介をお願いします。
「この部屋は、研究閲覧室という聞きなれない名前ですが、目的はマンガを研究調査するための部屋となっています。18歳以上であれば利用することができ、1週間以上前の予約で利用が可能です。初回には、利用登録が必要ですが登録時作成のカードは今のところ有効期限はありません。なお、研究が目的でなくても、前出の条件が満たされていればご利用いただくことが出来ます。こども時代に読んだマンガや、人から紹介されたマンガで手に入りにくいものなど、マンガミュージアムで検索したら出てきた!読みたい!という際にも利用できます。つまり、この部屋を利用する人たちは、そういう懐かしい、もう一回読みたいマンガを読んでいる人と、研究調査をする人たちの利用が一緒になっています。」
取材の際に紹介していただいた本です。後ほど紹介します!
マンガミュージアムでは、マンガ雑誌を保存するということが重要なんだそうです。
「雑誌はいろいろと出版されていて、読み終わったらどんどん廃棄されていった時代もありました。ここマンガミュージアムでは雑誌が第一次資料になっています。雑誌に掲載されただけで消えていく作品もあります。そういう作品も貴重です。そんな作品を調べに来る人たちもいます。「単行本は持っているが、最初に掲載された雑誌を見たい」という利用もあります。例えば、雑誌『りぼん』を読み返した時に、自分が小、中学生だった頃の思い出や当時の時代の空気感を思い起こすことができます。それはその時代感覚がその雑誌に閉じ込められているからでしょうね。掲載の広告や同時代の作家さんの作品を通しても感じ取れます。このように時代背景を調べていく際にも雑誌を巻号順に読んでいく、という面白さもありますね。」
確かに、マンガ雑誌を読むことで当時のことを思い出せるってすごいことですね…。
他に、どんな本があるんでしょうか?ここからは、取材時に見せていただいた本の何冊かを紹介します!
エルザ・ブランツ著 (2019年 DU BOOKSディスクユニオン)
フランスでマンガ家になった作者のエッセイマンガが日本語版になっています。タイトルから内容が気になってしまいます!
「他言語は私たちにとってはハードルが高いですよね。外国産のマンガを日本語で読めるのはとてもありがたいです。そして、ここ数年日本語翻訳本の量と種類が増えてきている傾向があります。50年ほど前だったらフランスのマンガに触れる機会が少なかったし、文化情報も少なかったのですが、それが現在ではこのように多くの本がでているのでこれらのマンガを通じていろんな国のことを知るきっかけになっていると思います。」
こちらは、開架の資料となっているので館内の外国産コミックスが読めるコーナー「ガイマンコーナー」で自由に読むことができます。
「子どもの昭和史 少女マンガの世界 1 昭和二十年-三十七年」 (別冊太陽)(1991年 平凡社)(版元品切)
この本でこの時代の少女マンガの歴史をたどることが出来ます!因みに、少年マンガ版もありました。
「現代漫画博物館1945-2005」(2006年小学館漫画賞事務局編 竹内オサム監修)
マンガ作品、作者の情報そして、雑誌の初出情報もわかる本です。
「先程、先ず雑誌に掲載されるマンガが多かったと言いましたがその雑誌掲載に関する情報が分かるのがこの本の良いところなんです。手に入りにくい本の情報を求めてくる人たちもいます。私も知らない作家さんもいっぱいいて、その時に一緒に探していくときこの本が役立ったということがあります。」
「 レヴォリュ美術館の地下 ある専門家の日記より‐ルーヴル美術館BDプロジェクト」
マルク=アントワーヌ・マチュー著 (2011年ShoPro Books )
©Futuropolis / Musée du Louvre éditions, 2006
「2009年にルーヴル美術館とマンガミュージアム共催の展覧会を開催しました。フランス語圏のコミックスを「バンド・デシネ(BD)」といいますが、主にそのバンド・デシネの作家さんがルーヴル美術館をテーマにした作品を描かれました。日本のマンガ家では「ジョジョの奇妙な冒険」でも有名な荒木飛呂彦さんがこのプロジェクトに参加されていましたが、その原画を展示した展覧会を行いました。その展示作品のひとつが出版された作品です。美術館の中の作品や空間をモチーフに作家が自由に表現している面白い作品です。美術館とマンガが出会ってこういった作品が生まれる、創作が創作を呼んだ(生み出した)ともいえるプロジェクトでした。」
外国にはこんなマンガもあって、日本語になっているものを読めるんですね!
コミックマーケット年鑑、カタログ(コミックマーケット準備会)
第1回から第11回までの情報をまとめた年鑑(写真左)と、近年のカタログ(写真右)を見せていただきました。初期の年鑑はかなり薄いですが、現在のものはとても厚くなっていてびっくり!同人誌文化の進化を感じました。
「関西でコミケのカタログがここまで揃っているのは珍しいと思います。コミケの準備会の方が、関係者の方へ声をかけていただき、揃ったものを寄贈してくださった貴重なものです。」
このように、外国のマンガから昔のマンガまで、様々なジャンルの本を紹介していただきました。紹介した本は予約をすることで、「研究閲覧室」で読むことができますが、外国作品の一部は館内にあり、自由に読むことができるものも沢山あります。是非、外国のマンガも読んでみてください!
マンガミュージアムでは、新しい扉を開けることが出来るそうです。
「純粋にマンガを「読む」楽しみで利用する方、調査研究のために利用する方、本を書くために利用する方、マンガをテーマに論文(卒業、修士、博士)を書くために利用する方と、マンガをテーマに深読みをされたい方たちは関西圏ではまずこの「研究閲覧室」を利用してくださっています。その他にも館内には「紙芝居」、「ニガオエコーナー」、ワークショップなど色々なマンガの楽しみ方が用意されています。・・・ということで、どこの扉を開けるかは皆さんご自身の興味の部分になってくると思います。来館いただければ色々な体験を通してもっと奥深く知っていただくことができる場所なので、1回は来てほしいなと思っています。自分が小さい時に読んでいた作品に出合い、その時代を思い出す、またその作品を読んでみて今の考えとの差に気づくとか、何かしら発見があるのではないかなと思います。」
貴重なお話、ありがとうございました!
京都国際マンガミュージアムでは、所蔵資料が約30万点あります。その内の約5万冊ものマンガ本が自由に手に取り読むことができる形で館内の壁面に配架されており、地下には約25万点の資料が収蔵されています。この収蔵資料も入館料だけで、「研究閲覧室」の初回登録・予約をすれば読むことができるので研究目的でなくても、読みたい本があれば是非行ってみてください。マンガ好きな方も、マンガについて更に深く知ることができます!!
今年の「京まふ」では、この京都国際マンガミュージアムも会場となっているので、近くから来る方も遠くから来る方も是非利用してみてください!きっと興味のある本が見つかります。
*研究閲覧室:金曜日 日曜日開室(1週間前以上の要予約)
京都国際マンガミュージアム
〒604-0846 京都市中京区烏丸通御池上ル(元龍池小学校)
TEL:075-254-7414(代)/FAX:075-254-7424
開館時間 10:30~17:30(最終入館17:00)
休館日 毎週火・水曜日(休祝日の場合は翌日)、年末年始、メンテナンス期間
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