
2025年3月20日の春分の日、海の京都の玄関口・舞鶴の地にて、「舞鶴合同祭1」が開催された。
このイベントは、様々なジャンルが集まった同人誌即売会。参加者は同人誌を通じて交流を深めるだけでなく、コスプレも楽しむことができる。この記事では、今回が初開催となった「舞鶴合同祭1」の様子を、写真と共に振り返ってゆく。
初開催へのみちのり
会場となったのは、旧海軍の舞鶴鎮守府の軍需品保管庫などとして活躍していた「舞鶴赤レンガパーク」。
特に今回のイベントで使用された「赤レンガ2号棟」は、明治35年(1902年)に建てられた倉庫。「旧舞鶴海軍兵器廠維品庫備艦兵器庫」とされており、パーク全体が日本遺産にも認定されている。
舞鶴赤レンガパークでの開催は一筋縄ではなかった。初開催ということもあり、会場側との交渉は難航した部分もあったという。それでも代表の増田さんは諦めることなく、1年半の準備期間中に何度か舞鶴まで足を運び、イベント開催への熱意を訴え続けた。
結果、様々な障害を乗り越え、代表の努力はついに実った――「舞鶴で同人誌即売会を」という増田さんの想いが詰まった、この地でのイベント開催である。
最高の世界観と空気
ずらりと並ぶ赤レンガ倉庫のロケーションは抜群。目の前には湾も広がり、穏やかな潮風を浴びつつ、かつての歴史に想いを馳せることができる。後で紹介するコスプレの撮影背景としても、映えること間違いなしだ。
こじんまりとした即売会会場は、レンガのあたたかい色に包まれ、ノスタルジックな雰囲気。普段昼白色の蛍光灯に照らされた展示場でのイベント参加が多い筆者にとって、かなり新鮮な体験だった。
机がところ狭しと並んでおり、様々な頒布物が目を見張る。人気のジャンルは、海軍鎮守府があった舞鶴ということもあり、やはり「艦隊これくしょん(艦これ)」。80スペースほどの中の半分以上を占めていた。
舞鶴へは、京都駅からは直通の特急「まいづる」で約1時間半。そのほか、小浜線方面の福井県をはじめ、関西圏からの参加者が多かった。今回のスタッフの中で最も遠くから来たのは熊本からだそうだ。
舞鶴という土地は決してアクセスが良いとは言えないにもかかわらず、会場は一時通路を通れないほどの人で賑わった。主催の増田さんは、「前後の日が平日という来づらい条件なのに、これだけの人が集まってくれたのは本当に感謝しかない」と笑顔だった。
コスプレは屋外もOK!
素敵な写真は「艦これ」より、提督と松風のコスプレ。背景には海上自衛隊の掃海艇「あいしま」が停泊していて、本当にゲームの世界に飛び込んだかのようだ。
お次は同じく「艦これ」から、朝日のコスプレ。衣装は自作だそうで、細かい装飾までこだわりを感じられる。
サイレントオークションも開催
イベントも終盤に差し掛かると、サイレントオークションが開催された。これは、サークルが出品したイラストなどを参加者で競り合うものである。
市場での競りのように、「1,000円!」などと発声すると騒がしくなるので、希望額を紙に書いて競り合う。そのため、「サイレント」なのである。サークル作家の描きおろしの貴重な一点物も多いため、品定めをする参加者たちの目が光る。
出品された20点ほどは、次々と競り落とした参加者の手に渡っていき、会場のボルテージは最高潮を迎えた。
チラシから広がる交流の輪
同人誌即売会は、手から手へ、人から人へのリレーで成立している。
この文化は、「全員が参加者」を第一に、サークル参加者、一般参加者、そしてスタッフがひとつになれることを目標としている。「自分の創作や想いを共有したい!」という気持ちを共有する場。同人誌の頒布はもちろんだが、他のイベントの宣伝も欠かせない要素の一つだ。
「舞鶴合同祭1」でも、チラシ置き場が設置され、様々なイベントが紹介されていた。直近に京都で行われる同人誌即売会は以下の通りなので、気になるイベントがあればぜひ参加したい。
名称 | 日程 | 会場 |
サンライズクリエンション 2025京都春 | 4月5日 | みやこめっせ |
Iris Projection Triangle Link(アイドルマスターシャイニーカラーズ同人誌即売会) | 6月8日 | みやこめっせ |
往古のゆかり(東方Project 鬼伝説&秘封倶楽部同人誌即売会) | 8月30日 | ガレリアかめおか |
文々。新聞友の会(東方Project 射命丸文とゆかいな仲間たちオンリー同人誌即売会) 科学世紀のカフェテラス(東方Project 秘封俱楽部オンリー同人誌即売会) |
11月22日 | みやこめっせ(共催) |
届け 届け 想いよ 届け
都心での大規模な同人誌即売会は有名なものが多いが、地方でのイベントやマイナージャンルはまだまだ知名度が低いのが課題。様々な人たちの協力と熱意があってこそ成り立っているイベントを、どのようにして持続可能なものにできるだろうか?
確かに、同人活動の抱える問題は複雑であろう。筆者も、同人誌即売会を先鞭をつけて公にすることについて、葛藤がないわけではない。しかし、「初音ミク」や「東方プロジェクト」を筆頭に、最近だと「ブルーアーカイブ」など、同人活動の趣旨を原作側が理解し、二次創作に対するルールを明確にすることで、それに開放的な作品も多いのは事実である。
(参考:「(初音ミク)キャラクター利用のガイドライン」・「東方Projectの二次創作ガイドライン」・「「ブルーアーカイブ」二次創作・ゲーム実況配信及び動画投稿に関するガイドライン」)
筆者は絵が描けないし、二次創作のアイデアも浮かんでこない。そのため、サークル参加者としてイベントを盛り上げることは難しい。
一般参加はもちろんだが、それ以外に何かできることはないか――初めに挙げた問いへの筆者のひとつの答えとして、取材に行き、生の声を聴くこと。そうすることで、参加した人とは思い出を共有できればいいし、そうでない人でもイベントの空気感を感じてもらい、この文化を伝え・残していくことができるのではないかと心底思う。
最後になるが、同人誌即売会は、ボランティアのスタッフの尽力で成立している。スタッフはいつでも募集中なので、気になる人は話を聞きにいってみよう。ちなみに、「舞鶴合同祭」は、次回の開催も企画中とのこと。公式SNSなどをフォローして、最新情報を待とう。
合同祭実行委員会HP: http://www.godosai.com/
合同祭実行委員会X: https://x.com/dai9shugodosai
「KYOTO CMEX」ポータルサイトでは、マンガ・アニメ、映画・映像、ゲーム、クロスメディアの情報を発信する京都発のポータルメディアです。SNSをフォローして掲載情報をチェック!(情報募集)