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【京都ヒストリカ国際映画祭】 東映京都撮影所 高橋様、樋口様インタビュー後編。 映画祭を通して人と人との架け橋に。時代劇の映画祭にかけた想い。

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【京都ヒストリカ国際映画祭】関係者インタビュー第1弾後編

京都ヒストリカ国際映画祭 プログラム・ディレクター/ 東映株式会社京都撮影所スタジオ事業部 高橋剣氏 

東映株式会社京都撮影所スタジオ事業部 樋口智則氏

 

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 【立命館大学映像学部×京都ヒストリカ国際映画祭】

立命館大学映像学部ではこれまで、KYOTO CMEXに関する様々なイベントの運営や広報活動に取り組んできましたが、今年は公式サイトで関係者インタビューを行うことになりました!

 

 第1弾は、京都ヒストリカ国際映画祭の立ち上げから携わる高橋剣氏と、京都ヒストリカ国際映画祭の人材育成部門である京都フィルムメーカーズラボ「ハンズオン時代劇(時代劇制作ワークショップ)」の昨年度の参加者、東映京都撮影所の樋口智則氏にお話を聞きました。

 

こちらの記事は後編です。前編はこちら↓

 — https://cmex.kyoto/2021/12/08/33517/

 

 

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映画祭は人と人とのつながりが映画の未来を作る場所。

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Q お二人にとって、「ヒストリカ」とはどのような存在でしょうか。

高橋:個人的に大変楽しく、毎年一番楽しませて貰っている…という気がします。仕事を超えて、もう本当に純粋に楽しい。監督にも裏をいろいろ聞けたり、それに加えて、ワークショップみたいな所でも色んな新しい人たちとの出会いがあったり。そういったことが大変良い機会になっていて、人脈ネットワークとして京都撮影所にも返ってきています。実は今年の秋に、ヒストリカで以前呼んだことのある監督が新しい企画を持って日本に撮影に来る予定がありました。コロナ禍のためにちょっとそれはコロナ禍で延期になっていますけどね。そういった形で撮影所のビジネスにもちゃんと繋がるものになっているので、僕もそろそろ撮影所のキャリアの終わりが近づいているんですけど、ちゃんと誰かに引き継いで、残していきたいなと思っています。

樋口:私はフィルムメーカーズラボの方しか参加していないので、そちらの事しか話せないんですけれども、高橋さんのおっしゃるように、本当に外部の方と関係を築き上げられるっていうところがすごく貴重な場だなと思っております。私が参加させていただいたハンズオン時代劇では、チームで3日4日ずっと一緒に撮影を行うので、仲が深まりまして、今でも、来ていただいた何人もの方々と連絡を取り合ったりしています。

 

Q.高橋さんが映画祭に関わる上でどのようなことを大事にされていますか?

高橋:大事にしていることは、始まった当初からの目的から外れないということですね。多くの映画祭は、映画“文化”振興が主眼になっているんですけど、ヒストリカは映画“産業”振興を主眼にしています。私も撮影所の人間なので、次の映画作りに繋がるようなきっかけとして映画祭をうまく使えたらいいなと常に思っています。

 

Q京都ヒストリカ国際映画祭に関わる上で、良かったと思うことはなんですか?

高橋:ヒストリカを通じて世界中のクリエイターの人達と大分濃いネットワークができるっていうのが、映画祭やっていて一番良かったなと思いますね。あとは、ヒストリカで毎年大体50~60本の、世界で作られた新作の歴史映画を見るのですけれども、それを見て世界の歴史映画の動向を考えてみるっていうのは、僕にとって良い機会になっているなと思います。

 

Q.京都ヒストリカ国際映画祭を通じて時代劇とか歴史劇の魅力を発信するという視点で、最も印象に残った企画はなんですか?

高橋:いっぱいあるんですけど、ひとつ言うと、三年ぐらい前にやった企画が印象に残っています。ヒストリカの中のフィルムメーカーズラボには、大体40人の外国人の方が来られます。そういった方たちは当然自分達でも映画を作っているんですが…観ている時代劇は大体黒沢、溝口…なんですよね。もう大分古典になっている作品。それで、そういう方達に、今でも面白い時代劇を観せたいと思って。黒沢・溝口だけでないものを京都では作ってきた、というのをお観せするのに、東映の…大分古い方ではあるんですが、加藤泰さん【編注:映画監督。代表作に『沓掛時次郎遊侠一匹』『明治侠客伝 三代目襲名』などがある。】の時代劇に英字幕をつけて、みんなで観るという企画をしました。で、フィルムメーカーズラボに来る人たちと、『緋牡丹博徒お竜参上』のような一本の映画を観て、語り合う…いました。その中の一コマでは、同じ…加藤泰監督の作品の台本を読んでもらって、台本の絵コンテを切ってもらって、コンペをやります。コンペでは、入江悠さん【編注:映画監督。代表作に『SRサイタマノラッパー』『22年目の告白〜私が殺人犯です〜』などがある。】が…優秀なコンテをいくつか選んで、その後、加藤泰監督が一体どう撮ったのか、というのをお見せするんです。その中で驚きのカットを見せられるんですけど、それに皆さんまあ大変喜んで…。その後また英字幕付きで見たりとかっていう。あれは、日本の時代劇の底恐ろしさ【編注:原文ママ】を見せられたんじゃないかなという…企画でしたね。

 

 

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歴史映画を作る人と、作品の大きな交差点へ

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Q.昨年度のコロナ禍におきまして、オンライン上映を一緒にやっていくなど映画祭の新たなあり方を検討されたかと思いますが、昨年度の経験を通して、今年はどんな映画祭にしていきたいと考えていますか?

高橋:去年はオンラインとリアルとを合わせたハイブリッドな形でやったんですけれども、おそらく今の段階では今年もそういった形になるだろうと思っています。今年の10月の末、11月の頭に開催を予定しているんですが、多分今年も会場には外国の方を呼べないだろうなというところを感じています。なので、去年同様、新作の歴史劇映画を上映する企画では、クリエーターの方にオンラインでQ&Aをさせてもらいたいと思っています。ホントを言うとね、そこで何かファンの方々と繋がるようなコミュニティみたいなのができればいいなという風には思っています。去年オンラインで映画祭をやって、京都だけじゃなくて日本全国の歴史映画ファン、ヒストリカのファンを…ちょっとつつくことができたんですよね。そういった人たちには、オンラインっていうのは大変良い機会だと思うので、今年はもちろん、コロナでなくともやりたいなと思っています。その上で、何かバーチャルな形でもいいんですけれど、ファン同士のネットワークコミュニティみたいなものができたら一番いいなと思っています。そこにね、皆さんのこういった社会連携プログラム【編注:立命館大学映像学部の講義プログラム。本取材は、京都府等と連携し、京都ヒストリカ国際映画祭の運営に携わる上記講義内で実施している。】みたいなものも上手く活用できたら、一番我々としては有難いなと思っていますね。

 

Q.京都ヒストリカ国際映画祭に望む上での今後の夢や展望を教えてください。

高橋:始めた頃は、映画祭の運営は思っていた以上に大変難しくて、それも産業振興としての映画祭は実に難しいので、なかなかゲストを呼ぶにも大変なところがあるんです。でも、もっとお客様にも来ていただきたいし、上映作品も増やしていきたい。そして映画祭が歴史映画を作る作品と人のより大きな交差点になっていってもらいたいっていうのが僕の願いですね。

樋口:私は去年、高橋さんや松竹撮影所の永島さんたちが、京都ヒストリカ映画祭の上映作品を選んでいたのを間近で見ていました。高橋さんも先ほどおっしゃっていたように、昔の時代劇は勧善懲悪やお涙頂戴という制約があっても、すごく良い作品が多いですね。正直僕はあまり時代劇を見てこなかったのですが、去年初めて『切腹』などを見たときには、完成度や、今と全然違う撮り方といった、今と昔の違いをすごく感じました。昔は昔でよくて今は今の作品でいいというか。時代の変化に伴って、今は今の作品でいい部分も、逆に、昔はできたのに今ではできないこともわかりました。そういう点から、どうやって昔の名作をどうやって超えていくかをフィルムメーカーたちで考えていけるような映画祭になって、より評価される監督さんたちが出てきたら、また新たなジャパニーズ映画ブームを作っていけるのではないかなと思います。すごい大それた言い方になってしまいましたが、そういう風になっていけたら素敵だなと思っています。

 Q.最後に、京都で学んでいる未来のクリエイターに向けてメッセージをお願いします!

樋口:京都は映像製作をしていく上で本当に恵まれた場所だと思っています。情緒あふれる自然でや、歴史の長い建築物、最高のノウハウ持った松竹撮影所、東映撮影所どっちもあったり。あとアニメも、京都アニメーションさんがあったりだとか。ゲームもすごく盛んで、任天堂さんがあったり。映像制作をする上で沢山のインスピレーションや技術を得られる、とても良い環境だと思っておりますので、この最高の土地の中で技術と発想を磨いて、京都出身の世界に誇れるクリエイターとなる人が育っていってくれたら嬉しいなと思っております。

高橋:この質問はヒストリカをやっている時に私がゲストの方によく問いかける質問なのですが、一昨年、溝口健二監督の『近松物語』をヒストリカで上映した時に来ていただいた香川京子【編注:女優。代表作に『東京物語』『近松物語』などがある。『近松物語』では主人公の妻を演じた。】さんは、「とにかく映画を観てください」とおっしゃっていました。僕も本当にそう思います。多分今の若い方達は忙しすぎると言うか、いろんなものを情報としてキャッチするのに忙しないのではないかなという気がします。もっと腰を落ち着けて、溝口健二なら1回溝口に浸ってみるとかっていうことをもって映画に浸るというか、そういう時間を持てる時間というのは特に学生の時代にしかないので、あまりちょこまかと目移りせずに、自分のスペシャリティをじっくりと築いた方がいいのかなと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【写真左:京都ヒストリカ国際映画祭 プログラム・ディレクター/ 東映株式会社京都撮影所スタジオ事業部 高橋剣氏】

【写真右:東映株式会社京都撮影所スタジオ事業部 樋口智則氏】

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