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お酒を片手に語り合う「地下鉄に乗るっ」のIFと未来~設定資料集から幻の脚本まで!?【地下鉄に乗るっ アニメーション展】クロージングイベントレポート
- 2025/6/23
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2025年5月24日から6日間の日程で行われた「地下鉄に乗るっ アニメーション展」が、29日に閉幕を迎えた。
本当に盛りだくさんのコンテンツが披露された今回の展覧会。それを締めくくるべく、29日にクロージングイベントが開催された。イベントでは、「地下鉄に乗るっ」のアニメーション制作を手掛ける株式会社魚雷映蔵より、代表の佐野リヨウタさんと、総合プロデュースを務めるデザインオフィス・GK京都の名倉剛志さんが登壇し、トークイベントで盛り上がった。
クロージングイベントまでの「地下鉄に乗るっ アニメーション展」の歩みを簡単に振り返ろう。
会期初日には、オープニングイベント開催。「地下鉄に乗るっ」の楽曲を歌うシンガーソングライターの大木ハルミさんのミニライブで盛り上がった。それに引き続いて、大木さん、佐野さん、そしてかつてのライブハウス「VOX hall」店長で、現在PUB VOX hallのオーナー兼店長を務める有堀誠さんによるトークショーが行われた。
また、会期中はアニメ制作の際に使われた原画をはじめ、キャラクターたちの設定資料やクラウドファンディングの企画書など、ファンにとっては嬉しい品がたくさん展示された。
この記事では、改めて「地下鉄に乗るっ アニメーション展」を振り返りつつ、展覧会との別れを惜しんだ会場の様子をお届けする。

会場のエレベーターに貼られたポスター
KYOTO CMEXでは、本展示会の様子を計3回にわたってお届けしてきた。過去の記事は以下のリンクから!
①オープニングイベントの様子はこちら
②企画展の内容と魚雷映蔵佐野さんへのインタビュー記事はこちら
乾杯でイベントの打ち上げを

イベントは乾杯で始まった
クロージングイベントが行われたのは木曜日の午後6時半ごろから。平日の夜というせわしない時間帯にもかかわらず、たくさんのファンが会場に詰め掛けたことに、コンテンツの持つ熱量と歴史の長さと感じる。
これまでのイベントでの顔見知りの方も多かったようで、会場はアットホームな雰囲気に包まれていた。特に、今回のイベントは狭いハコでの開催だったということもあり、登壇者とお客さんの距離が近いのが特徴。
そのため、自然と会場内でのコミュニケーションが生まれ、往年のファンからのツッコミなどもあり、トークがより深みのあるものとなった。
「地下鉄に乗るっ」を文化的価値あるものに
企画展初日、京都は雨だった。「せっかくバイトの方を雇って、とても丁寧にボードに展示資料を貼ってもらったんですけど、朝来て見たら、湿気でシナシナになっていて焦りましたね」と、佐野さんは準備段階から初日の様子を振り返った。
このような展示会を開催するのは初めての試みで、事前にどこまで反響があるのか分からない状態からのスタートだった。そのため、「苦労や不安も多かったが、たくさんの方に喜んでもらうことができた」と、無事イベントを終えることができた佐野さんの顔には笑みがこぼれた。
最も反響の良かった原画の展示。特筆すべきは、複製原画ではなく、アニメーターの方が描いた実物が展示されていたということだ。ファンからは、「原画を売ってほしい」との意見も。
こうなると、原画だけにフォーカスした展覧会もできるかもしれないと、将来への期待が高まる。「その際は原画付きチケットなんかを販売するのも面白そうですね」と、佐野さん。トークイベントを通して、保管場所を取る原画の在り方に、一つの答えが見つかったかもしれない。
前回のインタビュー(まだ読んでいないかたはこちらを参照!)で、「地下鉄に乗るっ」の今後について、文化的価値のあるものになってほしいと語った佐野さん。この場で改めて、ファンとそのビジョンを共有することができた。
あったかもしれない「地下鉄に乗るっ」

初公開となったアニメKVのラフ画
2016年に当初100万円を目標にして行われた、30秒アニメ制作のクラウドファンディング。ふたを開けてみると、10倍の1,000万円を集めた。「こんなに寄付をしてくださったからには、何かをお返ししなければ」という思いで決定した、アニメの尺を10分に伸ばす決断が、結果的に佐野さんたちを紆余曲折させることとなった。
当時の魚雷映蔵は、10分の尺のアニメを作った経験がなかった。数10秒のアニメなら簡単なプロットさえあれば構成できるが、長尺のアニメになると、脚本を作ることが必要となる。その当初の企画を巡って、当事者の佐野さんと、アニメ制作において監修者の立場にあった名倉さんが、興味深い話を聞かせてくれた。
というのも、当初の脚本は京都市交通局の自虐ネタを盛り込んだ内容だったそうだ。しかし、京都市交通局からは当然リジェクトされ、今公開されている太秦萌たちの日常を描いた脚本に落ち着いた。それ以外にも、名倉さんの構想の中には、都くんが巨大化するロボットアニメの案もあったという。

地下鉄の「アイツ」
さらに、「京都市営地下鉄各駅で活躍する謎のシルクハットの男」をベースに新キャラを作りたい、という発言が名倉さんから飛び出した。確かに賀茂川さんのデザインで、あの謎キャラがどうアウトプットされてくるかは非常に見てみたい。
驚きの事実が次々と開示され、ファンたちの中にもどよめきが走った。「烏丸線と東西線が合体するアニメが見たい」との声もあり、ぜひ実現してほしいところ。制作陣とファンの距離の近さから飛び出た、このイベントならではの反応と言える。
引き継ぎ書みたいなマニュアル、あるいはバイブルと呼べるものを作りたい
10年以上の歴史の中で、京都市交通局の「地下鉄に乗るっ」の担当者は何度も変わってきていて、もはや佐野さんや名倉さんの脳内にしかない「地下鉄に乗るっ」の膨大な情報がある。これらを、どのようにして京都市交通局の担当者や、関係者各位に引き継いでいくのかという問題が存在する。コンテンツを文化資本的に価値づけていくためにも、それを知らない人に内容が伝わる資料が必要だ。
運営側だけではなく、ファンとしても公式の設定資料集といったものを求める声は大きい。「地下鉄に乗るっ」を長く残していくためには解決しなければならない問題が浮き彫りとなった。
かつて声を当てていた声優さんたちの情報や当時のイベントの様子、また、太秦萌たち以外のコラボキャラクターなど、整理しなければならない事項は山積みだ。ゆるい雰囲気の中だが、来る「地下鉄に乗るっ」15周年に向けて、一つのマイルストーンが置かれたように感じられた瞬間だった。

グッズを持ち込み最前を張るファンたち
地下鉄の線路は続く
6日間にわたって開催された「地下鉄に乗るっ アニメーション展」は、多くのファンに惜しまれつつ閉幕した。オープニングからクロージングまで、制作者とファンが一体となって盛り上がりを見せた本展は、「地下鉄に乗るっ」が長年にわたり愛され続けていることを、改めて証明する機会となったことは間違いない。
KYOTO CMEXでは、3回に渡って「地下鉄に乗るっ」にフォーカスした記事をお届けしてきた。10年を越えるプロジェクトの過去、現在、そして未来を考えることで、輝かしい記憶はもちろんだが、プロジェクトを取り巻く厳しい環境、そして、課題も多く見つかったようだ。
しかし、初公開の資料や制作陣の生の声に触れることができた今回の展覧会は、誰にとっても忘れられない体験となった。ここで共有された気持ちが、今後の「地下鉄に乗るっ」を持続可能なコンテンツにしていくことを期待させる、そんな希望に満ちたフィナーレだった。
次は京まふが舞台!
今回の京まふのメインビジュアルには、太秦萌と京乃つかさが起用されている。次は9月にみやこめっせで、「地下鉄に乗るっ」のキャラクターたちに会えるのが楽しみだ。
京まふは、西日本では数少ない大規模マンガ・アニメイベント”京都国際マンガ・アニメフェア”の略称(KYOMAF:KYOTO INTERNATIONAL MANGA ANIME FAIR)。会場には、出版社やテレビ局、映像メーカーなどが出展し、最新作のPRやグッズ販売、ステージイベントなどが開催される。
2025年は、9月20日(土)と21日(日)に、みやこめっせで開催されることが決定! 京まふについて、詳しくはこちら。
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