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ITジャーナリスト三上洋氏が語る「生成AIの現状と展望」:第二回コンテンツクロスメディアセミナー開催報告

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KYOTO CMEXの公式イベント、「コンテンツクロスメディアセミナー」。2024年度第2回目のセミナーを、2024年11月22日(金)にANAクラウンプラザホテル京都(京都市中京区)で開催しました。講師にお迎えしたのは、テレビ・ラジオでの解説を中心に活躍されているITジャーナリストの三上洋様です。今回のセミナーでは、「生成AIの現在と未来」をテーマに、最新動向から具体的な活用事例まで幅広くご講演いただきました。

三上氏の講演はまず、2024年9月に実装されたばかりの、音声でChatGPTを利用できる「ボイスモード」の実演から始まりました。ChatGPTが、ときにはユーモラスに返答する様子に会場からは笑いも漏れ、参加者は一気に生成AIのもたらす世界に引き込まれました。

続いて、生成AIが今までどのように発展したかを紹介されました。話題は生成AIが動く仕組みから、動かすために必要な半導体産業がどのように発展したかという話、最終的には地域経済から政治分野にまで広がり、生成AIが与えたインパクトの広範さが伺えました。

日本政府においてもChatGPTの運営法人であるOpenAIのトップと議論を行うなど、日本独自の生成AIの開発や活用に熱心であることが紹介され、今後の動きにも期待できることが紹介されました。

次に、代表的な生成AIであるChatGPT、Microsoft Copilot、Google Gemini、Claudeの4つについて、実演等を交えて紹介されました。三上氏によると、それぞれの生成AIの特徴は以下のとおりです。

ChatGPT:OpenAIが開発した生成AIで、GPTsと呼ばれるカスタマイズした生成AIを独自に作れることが特徴です。たとえば画像生成に特化したGPTsを使うと、ChatGPTで生成された画像よりさらに自然な画像が生成されました。
また、カメラ越しに見たものを音声で説明することも可能です。ChatGPTの公式動画も上映され、ChatGPTがロンドン旅行中の視覚障害者に、スマホのカメラを通じて周辺の様子を音声で説明したり、タクシーを呼びとめる動きについて指示する様子が紹介されました。

Microsoft Copilot:Microsoft社が開発する、基本的にはChatGPTと同様のビジネス向け生成AIです。たとえばPowerPointに「社内向けのプレゼン資料を作って」と指示して資料を作成できるなど、生産性向上に寄与することが期待されています。
中でも注目されているのが、Microsoft社のアプリを横断して動く生成AIエージェント機能です。この機能では、メールの添付ファイルを自動的にExcelでグラフ化し、メールに添付して返送できるようになるなど業務の自動化が実現できるとされています。

Google Gemini:Googleが開発した生成AIです。現時点ではNo.1クラスの性能を誇ると三上氏は評価されていました。ChatGPT同様、カメラ越しに見たものを認識、記憶します。
公式プロモーション動画では、オフィス内をカメラで撮影していたユーザーが「私のメガネはどこ?」と尋ねたところ、ほんの数秒画面の端に映っただけのメガネをすぐに認識し「机の上にあります」と返答する様子が紹介されました。特に画像生成が得意で、より自然な画像を生成できるという特徴も持っています。

Claude:Anthropic社が公共性を重視して開発した生成AIです。人類にとって危険有害なアウトプットを生成しないよう開発されていて、Amazonが出資しています。スマートな文章を出力する、コード生成が強いという特徴があり、主にコード開発をしている人たちに利用されているそうです。

続いて、生成AIの活用法が実際に紹介されました。

まず実演されたのが、不動産の物件紹介記事の作成でした。ChatGPTに資料を読み込ませ、記事を生成するための指示文(プロンプト)を入力し、実際に記事が出力されるまでかかった時間は数分程度。「実際に活用している方から見れば、当たり前の活用方法ですが、このような当たり前のことから活用し始めていくのが大事です」と三上氏はおっしゃいました。

このほか、紹介された具体的な活用事例は以下の通りです。

オンライン会議:自動文字起こしや、議事録など、会議後のtodoに生成AIを活用することで、会議終了と前述の作業がほぼタイムラグなしで完了するようになる

地方自治体:市民からの問い合わせなどの分類・整理、返答が、自動的に行えるようになる

検索での活用法:検索用のPerplexity(パープレキシティ)という生成AIであれば、参考URLを含めて検索ができ、生成AIにありがちなハルシネーション(嘘)の結果を避けられる

中小企業の活用事例:社外文書の作成、ウェブ広告の運用、採用面接の質問シート作成、ロゴの作成など

チャットボット作成:生成AIにヘルプやマニュアルを学習させることでチャットボットを作成できる

興味深い事例紹介の一方で、日本の企業では生成AIの導入があまり進んでいない現状が指摘されました。特に従業員数1000名以下の企業では15%程度しか生成AIを導入していないそうです。この理由として生成AIの懸念点「情報流出」「不正確さ」「著作権」を挙げられました。

ただし、三上氏はこの懸念は解消できると話されました。

情報流出については、プロンプトや読み込ませる資料の内容が流出する心配はないそうです。

また、不正確さについては、Perplexityのような参考URLまで出す生成AIを活用し、ユーザー側でも情報を確認することでリスクを抑えられます。著作権については、生成AIによっては、学習データに著作物に当たるものを含めないなどの対応がされています。

こういった対策を前提に、三上氏は「生成AIを活用しないのはもったいない」と結論づけました。

最後に、生成AIが与えるであろうネガティブな影響にも触れられました。生成AIの活用において、使いこなせる人とそうでない人との能力差が広がる、子どもの思考力・文章力が低下するなどの懸念が指摘されています。

しかし、三上氏はこれらの影響についてもやや楽観的に考えていらっしゃるそうです。特に子どもに対する懸念については、ご自身が大学で非常勤講師として教えている経験から、生成AIを使いこなすことで、思考力や文章力がむしろ向上する可能性があることを指摘されました。

一方、生成AIの運営企業が大きな影響力を持つことについては、懸念を抱いておられます。生成AIに出資しているGoogle、Meta、Amazon、Apple、生成AIに欠かせない半導体を生産しているNVIDIAやTeslaなどのビッグテックと呼ばれる企業の売上は、合計すると日本のGDPの2~3倍にも及び、世界経済に大きな影響を及ばします。

これまでは国と国の対立が問題になりがちでしたが、今後は国と巨大企業の対立が起きるようになるでしょう。これを防ぐためにG7やEUなどでは、いかにこれらの企業に規制をかけるかが話題になっていると、紹介されました。

だからといって「生成AIを使わない」という選択肢はない、というのが三上氏の考えです。中小企業においても、無料で十分な機能が使えるのでまずは使ってみる、若手の方にどんどん使わせることを参加者に勧め、講演を締めくくられました。

講演後は時間ぎりきりまで質疑応答が行われました。三上氏はご自身で質問に答えられるだけでなく、質問者の方に「あなたはどう思いますか?」と意見を尋ねられたため、終盤はディスカッションに近い時間になりました。三上氏並びに参加された皆様には、最後まで充実した時間を作っていただき感謝いたします。

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