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【開催報告】KYOTO CMEX 10周年記念講演&対談:角川歴彦氏と荒俣宏氏が語る「日本のコンテンツ」の価値と源流

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コ・フェスタ(JAPAN国際コンテンツフェスティバル)のオフィシャルイベントとして、地方では初めて京都で開催されたKYOTO CMEX事業は、今年度第10回の開催を迎えました。これを記念し、コ・フェスタ実行委員会と連携した「KYOTO CMEX 10周年記念事業」として、平成30年9月14日(金)に、角川歴彦様(株式会社KADOKAWA取締役会長、カドカワ株式会社取締役会長)と荒俣宏様(作家、博物学者)による記念講演&対談をホテルグランヴィア京都において開催しました。本稿では当日の模様の一部をご紹介します。

記念講演

角川歴彦様による記念講演のテーマは「Deep Insight コンテンツ価値の劇的変化」。激動の技術革新期の最中で「コンテンツのデジタル化で何が起きるか?」という問いに始まり、角川様は「20世紀の出版・ニュース・映画・テレビなどの各メディアが21世紀にはネットに取って代わられる状況である」と整理。「特にGAFA(ガーファ:Google, Apple, Facebook, Amazonの4企業の呼称)による3つの”C”(「コミュニケーション」「コミュニティ」「コンテンツ」)と1つの”M”(メディア)の展開が、『メディアとコンテンツの再定義』をもたらしている」とし、また、今後GAFAを超えるような存在が登場する可能性についても示唆(例:Netflix)した上で、「そのような厳しい競争の中で、業界人・クリエイターはプラットフォーマー達の動きにキャッチアップし、自分たち自身を革新していかなければならない」と力説されました。

話題は「コンテンツの価値」へ。「世界における日本のコンテンツに対する評価が急速に高まっている」として、英Perform Groupのスポーツ専門ストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」によるサッカーJリーグの巨額放映権契約締結の例を挙げ、「コンテンツ価値の再定義が起きている」と説明。「今後、コンテンツ価値は国内のマーケットの価値評価だけにとどまらず、全世界のマーケットの価値で評価されるようになる」と語り、Amazon PrimeやNetflixの巨額のコンテンツ製作費の例やアメリカでの大手出版社の買収の例を挙げ「世界ではコンテンツに対して価値を見出しており、コンテンツの争奪戦が始まっている」と20世紀のコンテンツ価値からの劇的変化の状況を訴えられました。

そして、そのようなコンテンツ争奪戦の渦中にあり、日本のアニメ、映画、小説、キャラクターは「世界に通用するコンテンツ」と説明。新海誠監督による映画『君の名は。』が125カ国・地域で海外配給されて世界中の若者から支持されている例や、東野圭吾氏による小説『ナミヤ雑貨店の軌跡』が日本で250万部、中国で800万部発行のヒットを記録した例、そして、(広義の)アニメ・映画産業の輸出市場のこの数年の劇的な伸びの例などを列挙し、「日本のコンテンツの価値が高まる劇的な変化の中にある。その価値を生み出すのはクリエイター。世界に輸出できるのは日本とアメリカだけ」とクリエイターへのエールを送り、結びとされました。

対談

角川歴彦様と荒俣宏様による対談のテーマは「日本のコンテンツが世界に広がる ~妖怪からみるクールジャパン~」。冒頭に角川様が「出版界ではライトノベル、特に『異世界モノ』がブーム」と話題を切り出したことから、荒俣様が「古代から続く『異界モノ』」という話題で「日本のコンテンツ」の価値と源流を探る展開に。

「異世界は日本のコンテンツの基礎となる部分。日本はずっと(「異世界」を)捨てなかった」と荒俣様。日本人に『化ける』という言い方が長らく好まれてきていることや、数千年~1万年にわたる縄文文化に日本の持つ「異世界」の源があること、山人と里人との関係からも異世界との関わりが伺えることなどを荒俣様が紹介し、「日本人の考え方や感性が縄文時代に培われたのではないか」とお二人の考えの一致を確認されました。

話題は「異世界との共存」へ。荒俣様が「共存においては、片方が『抵抗しない』と折れられるかどうかが大切。海外ではダントツに強いところが出てきて誰かが勝つ。日本では完全に勝たない」とし、異世界についての日本と海外とでの考え方の違いに触れて、「良い意味で切磋琢磨、悪い意味で馴れ合い、日本のそうした精神が『異世界との共存』を実現してきた」と説明。そして、共存のノウハウとして「タブーを犯さない」「变化(へんげ)する」という2つのポイントを挙げ、童話『鶴の恩返し』ではタブーを犯してしまったために異世界との共存ができなくなってしまった例や、貨幣の「貨」の字の成り立ちについて「貝」が「化」けてお金が成り立っているという变化の身近な例、中世の武士と対比しての古代の陰陽師の異界との付き合い方の巧みさの例などを紹介し、こうした例たちが「人々のどこかに『異世界との共存』についてのイメージを与えている」と考えを紹介されました。

「異世界」「異界モノ」をキーワードに、お二人の対談は、世界に広がるような「日本の新しいコンテンツ」を生むためのヒントを探る展開へ。映画『君の名は。』、(映画『スターウォーズ』のキャラクター)「ダースベイダー」、「ゴジラ」などを例に挙げながら、いずれの人気コンテンツにも『異世界』『变化(へんげ)』との関係が見出されるという旨の意見を交換。「若い人は自分自身がクリエイターにならないといけない。『変化(へんげ)の力』、ここを深く掘れば、新しいコンテンツが生まれる」と荒俣様が語り、対談の結びとされました。

記念講演・対談後には、KYOTO CMEX 10周年記念レセプションが開催され、100名を超えるコンテンツ業界関係者・有識者・専門家によるコンテンツ産業振興やクリエイター育成に資する活発な意見交換・交流が行われる貴重な機会となりました。KYOTO CMEXの次の20周年、30周年に向けて、また、業界・クリエイターの飛躍を期して、今後も事業を推進して参りますので、皆さまのご参加・ご協力を何卒よろしくお願いいたします。

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