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【京都ヒストリカ国際映画祭】 京都文化博物館・学芸課映像情報室長の森脇清隆様インタビュー前編。 地域とつながる京都文化博物館

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【京都ヒストリカ国際映画祭】関係者インタビュー第3弾

京都ヒストリカ国際映画祭 /京都文化博物館 学芸課映像情報室長 森脇清隆氏

 

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【立命館大学映像学部×京都ヒストリカ国際映画祭】

立命館大学映像学部ではこれまで、KYOTO CMEXに関する様々なイベントの運営や広報活

動に取り組んできましたが、今年は公式サイトで関係者インタビューを行うことになりまし

た!

第3弾の今回は、京都文化博物館の学芸員でもあり、京都ヒストリカ国際映画祭や京都フィルムメーカーズラボにも携わっている、森脇清隆氏にお話を聞きました。

 

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国内に5つしかない公共フィルムアーカイブの1つ、京都文化博物館

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Q 自己紹介をお願い致します。

 

森脇清隆氏(以下、森脇):京都文化博物館で映画担当の学芸員をしています。森脇清隆と申します。よろしくお願いします。

 

Q 京都文化博物館での日頃のお仕事の内容について教えてください。

 

森脇:博物館の映画フィルムのアーカイビングは基本、収集・保存・整理・公開です。映画のフィルムや関連資料について、収集・保存・整理・公開を行っていると言うことですね。最近は、デジタル技術を使った復元とかも行っています。私の仕事の半分ぐらいは博物館でのフィルムアーカイブの仕事ですね。残りの半分ぐらいが外部の人たちと一緒にする映画文化・産業振興の仕事になっています。

 

Q フィルムアーカイブの意義は何ですか?

 

森脇:ゲームやアニメでも今後問題になってきますが、映画会社っていうのは私企業ですので、海外の他の会社に買収される可能性があります。その時に、その会社がこれまで日本で作っていた作品が、海外に行ってしまう。それで良いのでしょうか?、と。例えば、松竹が作った映画史に残る作品で小津安二郎監督の『東京物語』があります。『東京物語』って映画会社だけで作ることはできませんよね。作本のテーマが生まれる背景には日本の文化、東京の文化があります。その中で作者が制作する。それをもちろん、東京の人も支えますし、他のアーティストの創作性もそこに入るわけです。そうやってできた結晶みたいなものなんですよね。それが、M&A等企業・投資活動の中で、日本のものではなく、海外の映画会社のものになってしまった。それではなかなか情けないですね。ですから、公的なアーカイブは地元の文化を保存するため、できるだけ高画質なコンテンツでアーカイブして遺すことが許されているという事ですね。

 

Q 京都のフィルムアーカイブとして意識していることは何ですか?

 

森脇:実は、日本で公的なフィルムアーカイブは5か所しかないんですね。公的なお金で運営されている映画博物館、映像博物館といってもいいと思います。映像っていったら、アニメも含めてなんですけど、映像博物館は5つしかないですね。そのうちの4つが大手の映画会社、映画製作者連盟公認のアーカイブです。その4つは、東京の「国立映画アーカイブ」、「京都文化博物館」、「広島市映像文化ライブラリー」、「福岡市総合図書館」です。この4つが映画製作者連盟、つまり東映、東宝、松竹、角川などのメジャー映像会社が所蔵している、あるいは制作した作品のフィルムのアーカイブを公認しているところです。映画コンテンツ、映画作品っていうのは複製可能な芸術品なんですね。複製可能な芸術品の中で、できるだけ解像度の高いもの、オリジナル近いものを保存しています。そして、その4つのアーカイブにはそれそれが特徴があります。その中で、京都の映画アーカイブ、「京都文化博物館」が行っているアーカイブは、基本的に、京都という地域だからこそ制作された文化をアーカイブしています。時代劇などですね。京都の文化としての映画、京都の名産品としての映画を保存してきました。つまり、京都のアーカイブっていうのは、映画の産地としての京都っていう特徴をしっかり持っていないとダメなんですね。また、今も継承され、生み出され続けているということもあり、単にアーカイブするだけではなく、メジャースタジオの東映撮影所や松竹撮影所と一緒に何かやりましょうと。京都が得意な時代劇は、今はあまり活発であるとは言えないので、そこを一緒に振興できないか、というテーマで一緒に手を組んで制作ワークショップや映画祭をやっています。

 

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地域とつながる京都文化博物館

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Q フィルムアーカイブ以外のお仕事は何ですか?

 

森脇:例えば、地域連携という軸では、新京極商店街や出町桝形商店街と共に地域の商業や観光の振興をしています。また、京都文化博物館で映画祭をしたり、作品を一緒に作ったりしています。そして、出町座のような地域のミニシアターと上映作品の補完ということで協賛上映を行ったりしています。

学校との連携としては、京都府内の学校と連携して地域文化の振興と映画・アニメ文化の振興をしたり、大学コンソーシアム京都の「京都国際学生映画祭」の企画のお手伝いや、京都文化博物館のシアターで、映画祭を開催したりしています。あと、「キンダーフィルムフェストきょうと」が開催する子供の映画祭、「京都国際子ども映画祭」に携わったりしています。

他にも、日本映像学会と共催で開催する、三日間連続で朝から晩まで映画を見るという「映像学会夏季ゼミナール上映会」にも携わっています。

そして、地域企業連携として、東映太秦映画村へのノンフィルム資料整理の支援もやっています。また、京都アニメーションさんが、京都文化を背景にした作品を作る時の取材協力もしています。

博物館がこんなに幅広く活動しているとは思わなかったでしょう。確かに、基本は、収集・保存保管・整理・ドキュメンテーション・公開普及・フィルム復元なんですが、博物館の仕事はすごく面白いんですよ。

 

Q なぜ、学校と連携をした文化振興を行っているのですか?

 

森脇:振興というものは、特定の年齢層だけを対象にするのではなく、その地方で、生まれて、学んで、仕事して、そして死んでいく人々を、トータルの部分でサポートしていくということが必要なんですね。狭いエリアだけに向けて活動していてもなかなか振興にはつながらない。文化とは、それぞれの世代がそれに意味を感じて、「自分たちもその文化を繋げていこう」というような主体的な繋がりがなかったら、文化として成立しないんです。そういう意味も含めて、映画を理解してもらう、興味を持ってもらう、あるいは作ることにも興味を持ってもらおうということを考えたときに、じゃあ、子供にはどんな機会を与えたらいいんだろう、学生にはどんな機会を与えたらいいんだろうとなりますよね。それは、映画作りだったり、映画鑑賞であったり、あるいは映画祭の企画をする事だったり。そういう機会をどんどん作っていかないとダメなんですね。その中でも、京都文化博物館では、子供向けには京都国際子ども映画祭だったり、学生向けには京都国際学生映画祭だったりを一緒にしています。もちろん、京都文化博物館が一方的にやっているっていう話ではなく、共催という形で一緒にやっている、同じ志というのか、同じ方向を向いている人達と一緒にやろうというようなことですかね。

 

―――

これからの映像産業を担う若い世代のために

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Q 京都文化博物館が映像産業の振興に参入することになった背景は何ですか?  

 

森脇:これは、京都文化博物館が時代劇を制作するフィルムメーカーズラボや世界の歴史劇映画を上映するヒストリカ国際映画祭に加わっていく、スタート地点ですね。京都の時代劇や映画産業振興の旗印になっているのが、現在の京都府の副知事、山下晃正副知事です。京都府の事業としての位置付けですね。旗振り役は山下副知事なんですが、山下副知事や私は映画産業の人ではないんですよ。私は、文化として歴史を研究して、歴史をアーカイブしているっていう立場です。ただ、これまでの長い歴史は現在につながっていて、もしかしたら延長線上に一歩先が見えるかもしれない。あるいは、今の一歩先を見るためには、歴史をみた方がいいかもしれない。その歴史が510年の歴史なのか、100年、500年の歴史なのか。そういう意味で、京都の映画の歴史を研究する人として、私は京都の映画振興のために何ができるのかという側面も考えられます。実際、映画歴史の研究成果から見て、新しい映画、新しい表現を生み出すのは、基本的に若者です。実際に、歴史的に新しい表現を生み出した人は、大体、2030代のときに生み出しています。そこで、私たちは、これからの映画産業の振興や投資の方向性等でも文化研究の立場として貢献できるのではないか、と。そんな中で、京都文化博物館も映画産業の振興を一緒にやりましょう、という話になって、加わって行きました。

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