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【京都ヒストリカ国際映画祭】 株式会社松竹撮影所・京都製作部 京都製作室長の井汲泰之様 インタビュー後編 時代劇の魅力を伝え続ける

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【京都ヒストリカ国際映画祭】関係者インタビュー第4弾

 

京都ヒストリカ国際映画祭 / 株式会社松竹撮影所京都作部 井汲泰之

 

【立命館大学映像学部×京都ヒストリカ国際映画祭】

立命館大学映像学部ではこれまで、KYOTO CMEXに関する様々なイベントの運営や広報活動に取り組んできましたが、今年は公式サイトで関係者インタビューを行うことになりました!

 

最終となる第4弾は、株式会社松竹撮影所京都制作部で室長をされており、京都ヒストリカ国際映画祭のみならず、京都フィルムメーカーズラボなど様々なイベントに携わられている井汲泰之氏にお話を聞きました。

本日は後編です!前編はこちらから↓

【京都ヒストリカ国際映画祭】 株式会社松竹撮影所・京都製作部 京都製作室長の井汲泰之様 インタビュー前編 時代劇に対する思い

新たな時代劇クリエイターの育成

 

Q. ここからは、京都フィルムメーカーズラボについての質問に移らせて頂きたいと思います。ここではどのようなことをされていますか?

 

京都フィルムメーカーズラボの参加者は、基本的には先ほど言った通り、撮影から納品までを協力して行います。その中において、私はいわゆる「スタジオ側」として、スタジオの調整や作品制作のプロセスを経験する手助けをします。作品を完成させるために具体的に何かやっていく、というよりは、そのプロセスをみんなで共有して、一緒に悩むことは悩み、アドバイスすることはアドバイスする、というような感じですかね。

 

Q. 京都フィルムメーカーズラボに参加しようと思ったきっかけをお教え頂きたいです。

 

フィルムメーカーズラボっていうのは、とにかく国内外含めた若い人たちに、長く時代劇に携わってきたスタジオでの時代劇作りを体験してもらう場です。これは、若い人達だけではなく、今まで作り続けてきた中で、ある種の法則、不文律と化していた事に疑問を持たなくなっていた私たちにも刺激があります。です。「これは何ですか?」「なぜそうするんですか」と問われていく中で、私たちも改めて考えることが出来るそういった形でお互いに得た新たな刺激、それによる新風をこの界隈に吹き込む事が出来るのではないか、という期待も、動機の一つかなと思います。

 

Q. 京都フィルムメーカーズラボを運営するにあたって、今までの経験が役立ったことはありましたか?また、今のお仕事に還元できている経験はございますか?

 

運営としては、今までやってきたことを若い人達に見てもらって、何かを感じ取ってもらう、という形です。なので、こちらから起こすアクションとしては、台本を読んで、背景にそくしたセリフ等の修正の提案をしてみたり、時代劇セットでの撮り方のアドバイスをしてみたり、といったことが主ですね。これは今までの経験値でお話をさせて頂いています。私自身は今までの経験が役に立ったかどうか、というよりは、一緒になってやった、という経験が新たに積み重なって行くことを重視しています。つまり、我々が実際の仕事でもやってるような事を、若い人たちと一緒にやってるっていう感じですね。経験して役に立った事と言えば、やっぱり、こういった事で刺激を受けて互いに成長の機会を得られるという点かなと思います。

 

Q. フィルムメーカーズラボで、海外の方が参加されてたと伺いましたが、海外の撮影陣と日本の撮影陣の作業の違い、撮影に臨む上での考え方の差異などはございましたか?

 

当初こそ、撮影に対するお国柄というか、考え方の違いに戸惑う可能性があるのではないかという不安はありました。しかし実際にやってみると、「本番!」って言うと静かになり、「カット!」っていうと、緊張が緩むですね。細かい撮影用語は違うと思うけども、基本のルール自体はそんなに変わらない。実際にカメラを向けて、照明を当てて、音を録って、役者さんが芝居して。という事自体が全く同じなので。それぞれ細かくはあったのかもしれませんが、根本的に何かが違う、という事は、感じたことがないですね。

 

Q. コロナ禍が明けた時に、何か挑戦したいことはございますか?

 

まずは、今この状況下ではかつての『当たり前』に一刻も早く戻ってほしいと願います。後は、今大体の人が映画含む動画の視聴に利用している、NetflixとかYouTubeTikTokなどといった配信アプリでの仕事、或いはチャレンジなんかをすることも、考えています。実は、私も10日ぐらい前にTikTokを観ていたですね。そしたら、「いくらでも観てられるなぁ」と。僕らが作ってるものとまた違うのですが、(同じ)映像表現だという事に気づきました。じゃあ、皆さんのスマホの画面と、映画館に行って、映画を観てもらうこと、そして僕らが制作している時代劇が繋がるには、どういうアプローチをしたらいいのか。これを新たに考えたいと感じました。映画館に人が来て、同じ空間で、大きな画面で、体験し、共有して行ってもらうっていうことが、我々の最重要アプローチでなくなる事はありませんが自ら今ある可能性を諦めることはないじゃないかなと。これから色んな人に色んなものをどうやって届けていくか、っていうことを調整してかなきゃならない。デジタルとの融合や配信の方式、それから撮影の方式も含めて、デジタルの活用、どうDXしていくか。デジタルの資産として何を作っていくのかに挑戦していきたいと考えています。

 

Q. 京都フィルムメーカーズラボを通して、伝えたいことはありますか?

 

京都フィルムメーカーズラボは、毎年結構いっぱい応募してくださるので、参加者をセレクトするですね。次に、選ばれた人たちに対して、「舞台は長屋か居酒屋、動物と子ども以外の登場人物を3人まで出して、短編時代劇のシナリオを書いて下さい」という課題を出すですよ。もちろん、時代劇のことを凄く考えてる人が書いてくれる事もあります。しかし、私としては、漠然と「時代劇好きだなぁ」って考えてるような人たちが、その期間シナリオを出そうとして色々考えて出してくれる事に、制作のノウハウを身に着け、その際の気づきを共有する場所としての意義があるのではないかと考えています。彼らにとっても私たちも、普段と違って、制作したものが直にお金を得るために動いていく訳ではないので、仕事という感覚は薄くて。「プロの人たちと時代劇の事を学び、考える」という、非常に不思議な、幸せな時間を共有できる、というのは凄い魅力だと思います。

 

未来のクリエイターへ捧げる時代劇の魅力

 

Q. 学生など、若い人たちは、時代劇を見る機会が減少傾向にあると思うんですが、その方々に伝えたい時代劇の魅力はございますか。

 

井汲:仕事で実際に触れる中で、時代劇に存在する武家とかの身分制度などの厳格なルールや戦国時代の下克上などドラマを生みやすい、ということは実感してますね。後は、江戸時代や戦国時代を実際に見た事がある人はもう居ない、という事を利用して、話を膨らませるために多少のフィクションを混ぜる。そうすることで、ある種のスペクタクルを表現しやすい、という点が魅力なんじゃないかなと。かつてあった有名無名問わない様々な時代劇が、現代の『るろうに剣心』や『超高速!参勤交代』などに通じる訳で、それを繋げている『時代劇』って、やっぱり僕らにとっては魅力があるものです。それを今は「魅力ってこれなんです」と自信を持って言える状況ではないので、自信を持つ為にも、外部と積極的に交流を持っています。僕らが知らない魅力を持ってる人達と交流することで、自分たちがその魅力に気がつき、前に進めるのではないかという希望を含んでいるという点も含めて、魅力なんじゃないかと思いますね。

 

Q. 井汲さんがご自分なりに考えていらっしゃる、「時代劇」の基準がございましたら、是非お聞かせ願いたいです。

 

時代劇には一種のコスチューム・プレイの要素がありまして。私としてはTシャツや短パンの人が出てきて時代劇をやっても別に構わないとは思いますが、ただ何を記号として「時代劇」とするのか、という所を明白化しておきたいとは考えます。実際の議論の場でも、「一体どこまでを『時代劇』に含めて企画するだ」って言う、ヒストリカの選定基準の話にはなるですね。例えば現代語で侍が喋ってても、「時代劇です」と言い切って上映してしまうのもアリなんですよね。「時代劇のルール」を崩したりして活用することによって、「面白いな」と思ってもらえたり、たくさんの人に見てもらえたりする事もあるので。その際に周りが何を言うかは、別に気にしなくていいと思います。ただ、ここで「どこが?」という疑問に対してきちんと筋の通った話が出来るようにしておかないと、作り手としてはまずいかなとは思います。しかしながら、その際の「基準」には、「侍が出ないと云々」というのは全く関係ないな、と思ってます。

 

Q.松竹さんの撮影所の中に立命館の映像学部の実習施設がありますが、実際に映像学部のみなさんと交流される機会はございますか?

 

VR関係の小道具とかをどういう風にアセット化して、どう転用が出来るのかというようなことをご一緒させていただいたり。あとは、インターンシップですね。学生さんが現場に入って、一緒に作品を作るところに携わっていただいたり、あとは、『アクターズスクール』という、俳優さんに時代劇の所作や殺陣やルールを、撮影所で撮影する作品に出て頂きながら勉強していく場所に参加して頂いたり。それ以外でも、もしお話をしたいという学生さんがいらっしゃれば、よく太秦のタバコ場でタバコ吸ってるので、よかったら話かけて下さい。結構しかめっ面でタバコ吸ってることが多いので、話しかけにくいと思いますが。ぜひコミュニケーションを取りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 

Q. 学生の皆さんは、おそらく未来のクリエイターになっていく方々だと思いますので、最後に、受講生の皆さんに何かメッセージをお願いできればと思います。

 

ぜひ一緒に何か作りたいですね。私も、最初は「何かやりたい、仲間に入れて欲しい」と思って、この仕事を始めています。これは皆さんにも共通する事だと思います。それぞれ、新参とか古参とかいろんな状況があると思うのですが、共にものを創っていく仲間であると考えています。この世界でも、発言力を高めるために経験値を積んだり、やりたいことをやるための時間を作ったりするためには、才能、能力が必要になってきます。その能力の中には、勉強したり、経験値を培ったりすることで華開くものもあると思います。フィルムメーカーズラボなどで経験を一緒に積んだり、共同で制作したり出来ると、昨日会ったばかりの人たちでも、仲間というかクリエイティブな感覚を共有出来るので、才能が華開く手助けになるのではないかと思います。そういう意味でも、一緒に物を作っていくことができれば嬉しいです。「一緒にやりましょう!」って感じですね。

 

 

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