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祝10周年!新作もイベントも動き出す!? 『有頂天家族』アニメ放送10周年イベントアイデアソン イベントレポート
- 2023/4/3
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森見登美彦さんの人気小説を原作にしたアニメ『有頂天家族』は、2023年、放送10周年を迎えました。これを記念して、3月4日、京都国際マンガミュージアムにて「有頂天家族アニメ10周年イベントアイデアソン」が開催されました。
このイベントは二部構成で、第一部は基調講演。事前情報では、アニメの制作プロデューサー、株式会社ピーエーワークス 代表取締役 堀川憲司さん・取締役 相馬紹二さんが登壇され、アニメ化の企画・制作秘話を語る予定でした。しかし当日の会場には、サプライズゲストが!原作者の森見登美彦さんが登場され『有頂天家族』に関わる重要人物が揃いました。
写真左から、森見登美彦さん、堀川憲司さん、相馬紹二さん。
まずは、作品への思いを語る3人。相馬さんは「入社して間もない頃から関わらせてもらっている作品です。自分にとってライフワークの1つで、会社にとっても大切な作品。これまでP.A.WORKSが手掛けた作品のなかで3期まで制作したものはまだないので、社内でも大事にしている作品です」と話しました。
堀川さんは「私が原作小説に惚れこんで、ぜひアニメにしたいと思ったのがアニメ化のはじまり。愛すべき作品で、丁寧に作りたいと思っているし、森見先生の納得のいく第3部ができるまで、いつまでも待ちたい」と話し、小説第3部完成への期待を示しました。
それを受けて森見さんは「そういえば、『有頂天家族』のイベントがおこなわれるたびに、続編は…?とプレッシャーをかけられることを思いだしました(笑)。『有頂天家族』は、一番自由に妄想をふくらませて書けた作品で、特別な作品です。アニメのイベントにも何度も登壇させていただいていて、原作者というより“一員”として受け入れてもらっている作品です」と語りました。
堀川さん・相馬さんから第3部執筆を期待されて、困ったような笑みを浮かべる森見さん。
『有頂天家族』は、京都を舞台にした物語。京都へのこだわりや思いを聞かれると、相馬さんは「監督の吉原正行さんは、リアリティのある京都を描くため、アニメ制作の前に、京都の出町柳に実際に住んでいました。ただ単に京都の有名なスポットを点で登場させるのではなく、身をもって京都の暮らしを経験し、“生活感のある京都”を描きたいという監督のこだわりです」と制作秘話を明かしました。
森見さんは「小説の京都は、僕が妄想した京都。アニメには、妄想の京都と、客観的な京都がどちらも存在している。これは、アニメならではだと思います」と話しました。
P.A.WAORKSは、これまでに多くのアニメ作品をつくっている会社です。『有頂天家族』と他のP.A.WORKS作品との違いを聞かれると、相馬さんは「京都でのイベントが多い作品。南座など、他の作品ではありえない場所でイベントをさせてもらいました。イベント内容も、他作品とは全く違います」と話し、 堀川さんは「私にとっても『有頂天家族』はライフワーク。何としてでも最後まで形にしたいと思っています。私一人だけではなく、ファンも期待し続けているのを感じています。2月末に行われたP.A.養成所の講義で、4月からアニメーターになる女性が語った将来の夢は『有頂天家族3』を描くこと、でした」と続編を待ち望んでいる声が多方面にあることを紹介しました。
過去の作品のイベントに多く登壇してきた森見さんは「『有頂天家族』のイベントは、どれも思い出深い。南座で花道を歩いたことや、東京で開催された「大有頂天祭’17」では、大雪の影響でキャストさん達が会場にたどり着けるのか心配した記憶があります。どのイベントも良い思い出です。イベントでは、みなさんが『有頂天家族』を好きな気持ちが伝わってきます」と感慨深げに話しました。
アニメ化するにあたり、難しかったことを聞かれた相馬さんは「『有頂天家族』には、“実在しない京都”もある。吉原監督は、この場所・このエピソードが、なぜ作品に登場するのかを、自分の中で考え、道理を見つけてからコンテ作業に入る人。例えば、『有頂天家族』には扇屋の奥に湖がありますが、実際の京都にこの場所は存在しない。そこで吉原さんは、京都の水に関する文献などを探し、この場所になぜ湖がある設定になったのかを模索して、ご自身の道理の中でアニメにも描いた。小説に書いてあるからじゃあそれで…というだけでは、映像には出来ないので」と、吉原監督のこだわりを紹介しました。
堀川さんは「一番難しかったのは、たぬきのデザインです。森見先生の世界観を表現するためには、どれくらいリアルなキャラクターデザインにするのが良いのか、すごく悩みました。キャラクター原案の久米田康治さんが、とても上手く描いてくださったと思います」と話しました。
アニメ化したときの感想を聞かれ、森見さんは「どの作品であっても、小説のイメージと、アニメには違いがあります。アニメの『有頂天家族』には、吉原監督の優しいところが反映されていますし、吉原監督のキャラクターに対する愛情の深さを感じます。僕が書く矢三郎は、落語的なあっけらかんとしたキャラクターですが、アニメの矢三郎はもっとしっとりしていて。これは、吉原監督の感性によるものだと思います。監督が小説をどう読んだのかが、アニメにあらわれているのでしょうね。吉原監督が自分で答えを見つけてからアニメにする、というお話を聞いて、すごく嬉しく思いました」と話しました。
豪華メンバーで語られる『有頂天家族』の制作秘話。第一部は、ファンにとって貴重な時間となりました。
第二部は、アイデアソン。アイデアソンとは、“アイデア”と“マラソン”をかけ合わせた造語で、様々な分野の人々が集まって、グループ単位でディスカッションをし、新たなアイデアの創出を目的としているイベントです。これまでの京都とのコラボレーション事例を紹介したあと、会場に集まった参加者を5グループに分け、「『有頂天家族』アニメ化10周年の記念イベントを考える」というテーマで、アイデアソンがスタート。
これまでのコラボ事例を紹介。こちらは叡山電車とのコラボ。
過去には、スタンプラリーもおこなわれました。
参加者同士、自己紹介をすませたあと、思いついたワードやアイデアをふせんに書き出し、グループ内でディスカッション。“面白き”イベントを目指して、アイデアを練りあげ、まとめます。
とあるグループのふせん。様々なアイデアが飛びだしました。
グループ内での話し合いが終わったあと、各グループ代表者による、登壇ゲスト3人へのプレゼンがおこなわれました。
「ニセ次期偽右衛門選挙」「有頂天たぬきダンスを踊ってSNSで拡散」「金曜倶楽部ツアー」「有頂天の日を制定」など、数々のアイデアが生まれます。各グループのプレゼンに対し、相馬さんは「これは4阿呆ですね」など『有頂天家族』らしい評価基準で講評し、会場はさらに盛り上がります。
プレゼンのために作られた、参加者によるパワーポイント。気合が入ってる!
プレゼンでは、参加者からお祝いの言葉も寄せられました。
イベントの最後に、この日の感想を聞かれた相馬さんは「参加者が本気でアイデアを考えてくれたことに感謝します。みなさんの熱量を感じました。絶対に第3部を作りあげたいです」と話し、堀川さんは「こじんまりとまとまらずに、やりたいというエネルギーを大切にしてほしい。やりたいことは言葉にしましょう」と、参加者に語りました。森見さんは「『続編はまだですか』とプレッシャーをかけられるのも、久しぶりでした。やはり『有頂天家族』は、みなさんの愛が重い! 今年中には書きはじめたいと思いますので、みなさんは妄想しながら待っていてください」と、執筆の意欲を語りました。
アニメ化してから10年。10年たっても愛され続ける作品の裏側には、並々ならぬこだわりがありました。2023年、ついに『有頂天家族』が動き出す!? アイデアソンで生まれたひらめきが実現することを期待しましょう!
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