- Home
- インタビュー・講演録, クロスメディア
- 「日常の京都」を感じる小説『京都府警あやかし課の事件簿』 執筆の裏側に迫る!「京歴からはじまる京都のまなび―作家・天花寺さやかさんとの語らい―」イベントレポート
「日常の京都」を感じる小説『京都府警あやかし課の事件簿』 執筆の裏側に迫る!「京歴からはじまる京都のまなび―作家・天花寺さやかさんとの語らい―」イベントレポート
- 2023/3/2
- インタビュー・講演録, クロスメディア
- 1,585
京都を舞台に繰り広げられる、人間と人ならざる者たちの現代ファンタジー小説『京都府警あやかし課の事件簿』。
作者は、京都生まれ・京都育ちの天花寺さやかさん。京都を愛する読書人たちに支持され、第7回京都本大賞を受賞。累計発行部数22万部を超える人気を誇ります。この作品の魅力の一つは、有名な京都のスポットが登場するだけではなく、京都の日常の息づかいを感じられること。
この記事は、天花寺さやかさんの執筆の様子を知ることができたイベントのレポートです。
2023年2月17日(金)、京都市中京区の京都生涯学習総合センター(京都アスニー)4階ホールで「京歴からはじまる京都のまなび―作家・天花寺さやかさんとの語らい―」が開催されました。
『京都府警あやかし課の事件簿』の作者・天花寺さやかさんが登壇し、京都市歴史資料館(通称「京歴」)への想いを語りながら、ご自身の創作についても話されました。
『京都府警あやかし課の事件簿』とは
京都府警が擁する「人外特別警戒隊」、通称「あやかし課」。化け物から神様まで、あやかしが絡むあらゆる事件を人知れず解決するのが彼らの任務である。
あやかし課に入隊したばかりの新人女性隊員・大(まさる)。個性豊かなメンバーとともに仕事に励む大だったが、実は彼女には人には言えないある事情があって…。
街の平和を守るために、古都を奔走する若き隊員たちの活躍を描いた傑作現代ファンタジー!
現在7巻まで出版されています。
©『京都府警あやかし課の事件簿7』天花寺さやか著(PHP文芸文庫)
中学生のころから京都市歴史資料館に通っていたという天花寺さん。もともと歴史が好きで、小学6年生の時には、女の子が戦国時代にタイムスリップする小説を書いていたそうです。
京都市歴史資料館は誰でも無料で利用できることから、中学生の時に立ち寄ったのが、資料館との最初の出会いでした。現在でも作品執筆のために、京都市歴史資料館で資料館調査員のサポートのもと、よく調べものをするそうです。
天花寺さやか先生
京都市歴史資料館があったからこそ生まれたエピソードがあります。『京都府警あやかし課の事件簿4 伏見のお山と狐火の幻影』内に収録された「松ケ崎の舞踏会」。京都市左京区の松ヶ崎で行われた舞踏会の再現に、主人公たちが招待されるというお話です。
実は、天花寺さんは、知り合いから「昔、松ヶ崎では舞踏会が開かれていた」と聞き、ひとづてに調べてみたものの、確たる情報には出会えませんでした。しかし、京都市歴史資料館で調査員のサポートを受けながら調べた結果、個人の邸宅でダンスパーティが開かれていた事実に辿りつきます。この事実をもとに執筆されたのが、4巻に収められているエピソードです。
たとえ小説に登場しないことであっても、リアリティを追求するため、京都の歴史や京都に住む人々の暮らしについて執筆前に念入りに調べるそうです。
「松ヶ崎の舞踏会」は4巻に収録。
©『京都府警あやかし課の事件簿4』天花寺さやか著(PHP文芸文庫)
このイベントの後半は、京都市歴史資料館の野地秀俊さんとの対談形式で行われました。野地さんからの「大(主人公)が所属するあやかし課の八坂神社氏子区域事務所を、喫茶店にしたのは何故ですか?」という質問に対して、天花寺さんは「京都は喫茶店が多い。喫茶店は、人が集まり、情報が飛び交う場所です。地域との繋がりが強く、その地域のコミュニティとしても機能しています。京都府警の他の課よりも、地域と連携を密に取りながら任務にあたるあやかし課に、ぴったりな場所だと思いました」と、京都人ならではの視点で答えていました。
左が野地さん、右が天花寺さん。天花寺さんが中学生の時からのお付き合いだそうです。
天花寺さんは「小説を書くには下調べが大切です。地名だけではなく、その場所にどのような人が住んでいて、どのような歴史を刻んできたかを知ることが大事。その土地を知って、感じて書くことで、お話がリアリティを帯び説得力が増します。その執筆の流れの中で、現地取材してもわからないときは京都市歴史資料館に行きます」と話しました。
イベントの最後に、天花寺さんはこれからの目標を話しました。「私は小説界の林屋辰三郎さんになりたい。林屋辰三郎さんは、日本の歴史学者・文化史家で、京都市の歴史を編纂した著書『京都』でも有名です。歴史と日常の暮らし、どちらも大切にされていた林屋辰三郎さんのように、私も小説を通じて京都の生活・文化を表現したい」と熱く語りました。
キャラクターのこまやかな心理描写、人ならざる者たちによる不思議な出来事など『京都府警あやかし課の事件簿』の魅力はたくさんありますが、京都の地域性を知ることができるのもその一つ。京都好き、歴史好き、京都に住んでいる方にもおすすめしたい作品です。
天花寺さやか(てんげいじ・さやか)
京都市生まれ、京都市育ち。小説投稿サイト「エブリスタ」で発表した「京都しんぶつ幻想記」が好評を博し、同作品を加筆・改題した『京都府警あやかし課の事件簿』(PHP文芸文庫)でデビュー。本作で第7回京都本大賞受賞。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」が実施したアンケート「アニメ化してほしいライトノベル・小説は?(2019年下半期)」では第3位にランクインした。
Twitter: @Tengeiji_Sayaka
「KYOTO CMEX」ポータルサイトでは、マンガ・アニメ、映画・映像、ゲーム、クロスメディアの情報を発信する京都発のポータルメディアです。SNSをフォローして掲載情報をチェック!(情報募集)