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「エッセイマンガ」に沼る、3つの理由。京都国際マンガミュージアム『わたしをすくう エッセイマンガの処方箋展』で学芸員さんに聞いてみた!
- 2026/5/14
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- まめきちまめこ, まんきつ, グレゴリ青山, 野村広子
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SNSで誰かの日常を掬ったマンガを読み、作者のアカウントを遡っていたらびっくりするほどの時間が経っていた――そんな経験はないだろうか。
エッセイマンガの原画等300点を展示し、エッセイマンガの成り立ちを紐解く「わたしをすくう エッセイマンガの処方箋展」が、京都国際マンガミュージアムで開催されている。
この記事では「京都国際マンガミュージアムの学芸員を独占取材!『わたしをすくう エッセイマンガの処方箋展』の見方を聞いてみた」につづき、同展を企画した、倉持佳代子学芸員にお話をもとにエッセイマンガが人を沼らせる3つの理由を探っていく。
■エッセイマンガが人を沼らせる理由① シンプルなのに考え尽くされたイラスト
どこか抜け感があり、見ていると心が和むエッセイマンガのイラスト。
倉持学芸員は「シンプルだからゆえ一見、誰でも描けそうに思えるが、実は細かい部分まで追求されているイラストが多い」と話す。
原画とともにネームと構想ノートを展示した、野原広子さんの紹介コーナー
本展ではマンガ家が、登場人物の心情を正確に伝えるために試行錯誤していることが垣間見える展示が盛りだくさんだ。
野原広子さんの『消えたママ友』の原画と構想ノートからは、眉毛や目の開き方といった表情のわずかな違いを何度も描きながら完成形を探る様子が読み取れる。
『定額制夫の「こづかい万歳」~月額2万千円の金欠ライフ~』を描いた吉本浩二さんも、1万円札や千円札など作品のキーとなるお札をかなり細かい部分まで追求しながら描き上げている。
エッセイマンガを読む時は、ストーリーはもちろんのことストーリーを違和感なく受け入れられるよう考え尽くされたイラストにも注目したい。
■エッセイマンガが人を沼らせる理由② 日常生活に役立つ実用性
日常生活に役立つ情報が組み込まれているのもエッセイマンガの魅力。
扱うテーマも多様で、料理に子育て、人間関係さらにはギャンブル必勝法まで指南してくれるものもありエッセイマンガを読めば、たいていの悩みは解決できるのではないかと思えてくる。
まんきつさんの描いた『そうです、私が美容バカです。』は笑えると同時に、「この美容法は効いた!」「これは意味がなかった」といった、かなり実践的な美容情報が盛り込まれている。本展では作中に登場する「リバーサルミラー(※通常の鏡に映る脳が好む左右反転像とは異なる、他人から見た自分を確認できる鏡)」を設置!作中で紹介された美容グッズを体験することができる。
『そうです、私が美容バカです。』のデジタル出力パネルとともに、作中に登場するリバーサルミラーが置いてある
京都府在住のグレゴリ青山さんは、京都ネタをこれでもかというほど盛り込む作者。
同展のために描き下ろした作品『京町家だった実家の話』では京都の”まち歩き”に役立ちそうな情報を入手することができる。
明治時代に建てられた京町家と昭和初期に建てられた京町家では、建物の高さと窓に違いが見られるそうで…京都観光をする前に『京町家だった実家の話』を読めば、何時代に建てられた京町家かが分かり”まち歩き”が楽しくなりそうだ。
本展書き下ろし作品、グレゴリ青山さんの『京町家だった実家の話』
京都国際マンガミュージアムでは定期的に企画展が開催されているが、過去の企画展「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット展」の取材時(記事はこちら)には「タイパが重視される現代、マンガにもタイパが求められているのではないか」と企画した應矢学芸員が考察していた。
マンガを読んでいるうちに日常生活に役立つ情報も得られるエッセイマンガは、タイパを求める時代にもマッチしているのかもしれない。
■エッセイマンガが人を沼らせる理由③ 作品に込められた思い
倉持学芸員は「最近では『マンガ家になりたい』という動機ではなく『この話を誰かに共有したい』という思いでエッセイマンガを描き始めた人も多いのではないか」と話す。
エッセイマンガの魅力として”共感”があげられることが多いが、作者が作品を描くに至った出発点が大きく影響しているように感じた。
まめきちまめこさんの『まめきちまめこニートの日常』より「電話するって言ったのに…」
個人的に、いつも「おもろい話を共有してくれる」作者として思い浮かべるのが、ほぼ毎日エッセイマンガを投稿しSNSのフォロワーが161万人(2026年5月時点)にのぼっているという、まめきちまめこさん。
アルバイトを転々とするも続かずニートとなった日常を描いた『まめきちまめこニートの日常』の『電話するって言ったのに…』では面接に行った後、はりきって通勤に使うための自転車や服を買ったのにも関わらず採用の電話がかかってこず、気づいたら1年経っていたというエピソードを愉快に綴っている。
倉持学芸員は「エッセイマンガは作者が身を削って見せてくれる世界。一線にいる作家の作品は変に取り繕っていない。だからこそ共感できるし、面白い」と語る。
他人のキラキラに触れる機会の多いSNS時代、等身大の姿を描くまめきちまめこさんの作品は、人の心をホッと温めるコタツのような存在となっているように感じた。

生活に役立つ豆知識を添えながら、私たちをクスッと笑わせてくれるエッセイマンガ。
そんなエッセイマンガの魅力をトコトン深掘りする「わたしをすくう エッセイマンガの処方箋展」の開催は2026年9月1日(火)まで。
取り上げたマンガ家は27名と情報量の多さも魅力なので、毎日を変える思わぬエッセイマンガに出合えるかもしれない。
【わたしをすくう エッセイマンガの処方箋展】
開催期間:2026年4月25日(土)~9月1日(火)※休館日/毎週水曜日、6月15日(月)~19日(金)
会場:京都国際マンガミュージアム2階 ギャラリー1・2・3
料金:無料 ※ミュージアムへの入館料は別途必要(京都国際マンガミュージアム入館料/大人1200円、中高生400円、小学生200円)


