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【地下鉄に乗るっ】クラファンから10年。京都のローカルコンテンツが1,000万円超を集めるまでの裏側を魚雷映蔵・佐野リヨウタが振り返る
- 2026/9/15
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2016年、648名のサポーターから1,042万2,000円を集めた「地下鉄に乗るっ」のアニメ制作クラウドファンディング(CF)。翌2017年には、その支援をもとに約10分のアニメが完成しました。CF開始から10年を迎えた2026年現在も、アニメに登場したキャラクターたちは、京都市営地下鉄の風景の中で市民とともに歩み続けています。

「10年前の出来事を振り返り、CFを支援し見守ってきてくださったファンへ改めて感謝したい。そして、現状を伝えつつ、未来に向かって進む『地下鉄に乗るっ』の姿を共有したい」。そんな思いから、9月20日、キャンパスプラザ京都で、『地下鉄に乗るっ アニメ制作クラファン10周年企画「アニメを作るっ」から10年! いまとこれからを語るっ』が開催されます。
企画したのは、2014年に京都市交通局が初めて「地下鉄に乗るっ」のアニメCMを制作したときから、コンテンツに携わってきた株式会社魚雷映蔵の佐野リヨウタさんです。アニメCMの展開をこのまま終わらせたくないという思いから、2016年には自らCFを企画。その後もアニメ制作やイベントを通じて、「地下鉄に乗るっ」に関わり続けてきました。

株式会社魚雷映蔵 佐野リヨウタさん
しかし、最初から1,000万円を超える支援を見込んでいたわけではありません。なぜ、京都市営地下鉄のPRキャラクターを、ファンの支援によってアニメにすることになったのでしょうか。そして、なぜ想定をはるかに超える金額が集まったのでしょうか。9月20日のイベントを前にぜひ知っておきたい、2014年のアニメCM制作から2016年のCF大成功に至るまでの現場を、佐野さんに振り返ってもらいました。
「故郷である京都に錦を飾ろう」と引き受けた2014年版アニメCM

リファイン後の太秦萌(左)、松賀咲(中)、小野ミサ(右)
「地下鉄に乗るっ」の現在につながる展開が始まったのは2013年。京都市交通局の若手職員増客チームから生まれた太秦萌たちのキャラクターデザインが、GK京都とイラストレーターの賀茂川さんによってリファインされたことがきっかけでした。
具体的には、京都市交通局が指定業者向けに実施したポスターデザインのコンペで、GK京都の案が採用されたことに端を発します。そこで「地下鉄に乗るっ」のキャラクターを使った展開が始まり、その一つとしてアニメCMが企画されたのです。
その際に、GK京都からアニメの制作を依頼されたのが、当時京都を拠点としていた魚雷映蔵です。彼らは京都の大学で出会い、活動を始めたチームでした。ちょうど京都から東京へ拠点を移そうとしていた時期でもあり、佐野さんはこの仕事に特別な思いがあったと語ります。

駅構内に飾られたポスター
佐野:「京都を去るに当たって、故郷に錦を飾ろうという気持ちがありました。正直、制作費はかなり安かったのですが、行政案件でもあるし、今後に繋がるかもしれない仕事だからやろうと。僕自身、『地下鉄に乗るっ』のポスターを見たときから、すごくいいと思っていたんです」
佐野さんはこのとき、当時GK京都に在籍していた名倉さんと磯貝さんと知り合うことになります。「アーティスト気質で推進力のある名倉さんと、その熱量を理解しながら現実との調整を図る磯貝さん。すごくバランスのいいコンビという印象でした」と、佐野さんは当時の様子を振り返ります。
2014年の京まふでフルカラー版アニメがお披露目

2014年の京まふの様子
2014年8月に、線画版がYouTube上で公開。翌9月の京まふ(京都国際マンガ・アニメフェア)で動画としては完成したフルカラー版が発表されましたが、声はまだ入っていませんでした。
実は、当時の京まふの企画「声優魂 in 京まふ」の副賞として、声優が選ばれたという経緯があります。「声優魂 in 京まふ」は、声優を目指す全国の中高生が集うイベントでした。この企画を通して、「地下鉄に乗るっ」アニメCMのキャラクターボイスも選ばれることになりました。

2014年の写真。四条駅の阪急乗り換え通路にて。
こうして10月には声も入った完成版が改めて公開されました。翌2015年4月には、同じ声優を起用して2本目のCM動画が制作され、京都市交通局のアニメCM事業としてはここで一旦区切りを迎えました。いずれも京都市がアニメを用いて地下鉄をPRするという画期的な内容で、佐野さんは「バズ」の中心にいるはずだったのですが……。
関連リンク
京都市交通局 京都市営地下鉄利用促進プロジェクト「地下鉄に乗るっ」
京都市交通局 燃え燃えチャレンジ班-若手職員増客チーム- ←初期の太秦萌の様子が確認できる。
2014年8月 「地下鉄に乗るっ」地下鉄利用促進PR15秒CM1「予告編」線画版
2014年10月 「地下鉄に 乗るっ」地下鉄利用促進PR15秒CM 完成版
2015年1月 2014年10月の別音声版
2015年4月 「地下鉄に乗るっ アニメCM Ver 京都のまちは地下鉄で。」
「これは流行る」と思ったが、反響は薄かった

佐野:「企画初期の段階では、『CMをテレビに流す可能性もある』なんて話もあったので、当時の僕はそれをかなり期待してCMを設計しました。最初は『なんか新しいアニメ始まったんだ』と思わせて、アニメの告知CMにありがちな『毎週○曜日、好評放送中!』というお約束の締めを『毎日、好評運行中!』とすることで、『いやこれ地下鉄のCMなんかい』って、メタ的な構成にしてみました。これはバズるぞみたいな感じで作ったんです」
当時、アニメを使って演出する自治体のCMは現在ほど一般的ではありませんでした。また、魚雷映蔵にとっても、この作品が注目されれば、その後の仕事につながるのではないかという期待があったそうです。ところが、想定していたような反響は起こらずに終わります。「正直、せっかく気合を入れて作ったのにほとんど話題にならなくて、僕らとしては『えっ』てなりましたよ。肩透かしだったというのがあります」と、佐野さん。
Twitter(当時)の波に乗ってダイレクトマーケティングを敢行

2015年頃、魚雷映蔵のTwitterアカウント
残念ながら期待通りの結果にはなりませんでしたが、佐野さんは「地下鉄に乗るっ」のさらなる可能性に気付いていました。そこで、佐野さんは自力で情報発信できる手段として、当時のTwitter(現:X)に目をつけ、ユーザーに対して自らマーケティングすることを決めます。こうして、佐野さんは魚雷映蔵のTwitterアカウントを使い、「太秦萌」や「地下鉄に乗るっ」などに言及した投稿へ直接返信しながら、YouTube上のCMを案内していきました。

実際の投稿
佐野:「エゴサすれば、『このポスター面白い』とか、『太秦萌が可愛い』とか、そういう投稿が見つかるんですよ。そこに私が直接リプライを飛ばして、『このキャラのCMもあるんで良かったら見てください』みたいに言っていました。今風に言えばインプレゾンビの走りみたいな、ダイレクトマーケティングです(笑)。結果的には、ファンの人たちと絡んでいくことになるんですけどね」
ツイ廃と化して地道な発信を続けることで、ネット上では少しずつ手ごたえを得ていた佐野さん。しかし、Twitterでの反応の先にいる人たちを、リアルな存在として意識していたわけではなかったと言います。それが思いがけずつながったのが、翌2015年の京まふでした。
Twitterの向こう側に、実際のファンがいた

2015年 京まふの様子
2015年の京まふでは、「地下鉄に乗るっ」のCMのキャストと主題歌のアーティストが出演するステージが開催されました。当初、佐野さんはCMについて解説する立場で出演する予定でしたが、直前になって司会者がいないことが分かり、運営側から急きょ司会も依頼されたとのこと。現在ではイベントの司会を務める機会も多い佐野さんですが、これが出発点になりました。みやこめっせの広い会場に用意されていた座席は全て埋まり、立ち見客が出るほどに人が集まっていたと、佐野さんは当時を振り返ります。
佐野:「制作会社の人間がいきなり司会で出てきて、『誰やねん』とか思われへんかなと、少し緊張しながら『魚雷映蔵の佐野です』と名乗ったんですよ。そしたら、なんか『おおっ』みたいに反応が返ってくるんです。これはもしや、Twitterでやり取りしてる人たちかなと思って、『Twitterで知ってくれたんですか?』と挙手を促したら、結構いらしたんですよね。そこで初めて、バーチャルなやり取りと、実際の会場の熱量がつながりました。」
「これはいける」、2回目の確信。佐野さん自らCFを立ち上げた

2015年の京まふの様子。画像でも、立ち見客がいることが見て取れる。
Twitterで交流してきた相手が、現実の会場へ足を運んでいた……。オンライン上に見えていた反応は、単なる数字ではなかったと知った佐野さんは、徐々に「この熱量を、何か目に見える形に変えなければいけない」と感じ始めます。
しかし、時代は2015年。Twitterは一般に広く使われていた一方、自治体の広報におけるSNS活用はまだ過渡期でした。さらに「地下鉄に乗るっ」を盛り上げる提案をするべく、佐野さんが「Twitterでこれだけ反応があります」と説明しても、その数字が示す意味やファンの熱量は、当時の関係者にはなかなか伝わりづらかったと言います。
200人が1万円を出せば、200万円になるのでは……
その後に、「地下鉄に乗るっ」をさらに推し進めていく具体的な計画が用意されていたわけではありませんでした。かねてから「地下鉄に乗るっ」にはまだ可能性があり、ここで終わらせるのは惜しいと感じていた佐野さん。そこで浮かんだのが、ファンから資金を募って新しいアニメを作るという案だったのです。
佐野:「京まふの会場に200人のファンがいたとして、1人が1万円を出してくれれば200万円になる。全員が支援するわけではないとしても、そのうち半分の人が参加してくれれば成立するのではないか。最初は単純にそう考えました」
しかし、魚雷映蔵が予算を組める余裕も、スポンサーのあてもありません。グッズ販売を行っても、まとまったお金を先に確保することは難しい……。したがって、ファンから直接制作費を募るCFが、当時の魚雷映蔵にとってほぼ唯一の選択肢でした。ただ、現在ほどCFが一般に知られていなかった時代。京都市交通局をはじめとする関係者に説明する際は、ネット上での反応に加え、CFとは何かという段階から話さなければならなかったと振り返ります。
それまでの関係者との信頼関係を活かしつつ、「できるだけ周囲に負担をかけないでできる方法はないだろうか」と、佐野さんがCF企画の構想を練り始めたのが、2015年9月から、翌年頭にかけてのことでした。
最初の目標は100万円、30秒のアニメ

こうして、2016年3月18日に始まった「【地下鉄に乗るっ】京都市営地下鉄の萌えキャラ「太秦萌」の、アニメを作るっ」プロジェクト。
最初の目標額は100万円で、30秒のアニメ制作。2014年と2015年に15秒のCMを1本ずつ制作していたため、まずはその2本を合計した長さにあたる30秒の新作を作ろうと考えたのがきっかけです。当時の魚雷映蔵は、佐野さんを含む4名程度のチームでした。この金額は、アニメーション制作をほぼ内製で済ませ、主に制作期間中の人件費を賄うことを念頭に置いて設定されたそうです。
佐野:「当時の魚雷映蔵は学生に毛が生えたような規模でした。1人が月に15万円から20万円あれば、2カ月ほど頑張って15秒~30秒を作れるのではないかという、かなりのどんぶり勘定です。市場の基準から見れば、不健全なくらい安い金額でした」
様々な可能性を検討する中で、CFのプラットフォームには、「Makuake」を選択し、魚雷映蔵から問い合わせることに。佐野さんはここで、当時の担当者だった菊地さんと知り合います。アニメ、京都という地域性、自治体、鉄道といった複数の要素を持つ企画だったため、参考にできる前例も多くなく、手探りで企画されていくプロジェクト。
こうして、少々見切り発車の部分もありましたが、佐野さんの熱い想いによってCFプロジェクトは公開されたのでした。ちなみに、当初の設定は、集まった支援額に応じてアニメーションの長さを拡張するというもの。100万円で30秒、150万円で1分、200万円で2分。
関連リンク

Makuake 【地下鉄に乗るっ】京都市営地下鉄の萌えキャラ「太秦萌」の、アニメを作るっ
魚雷映蔵 支援者へのお礼ページ
魚雷映蔵 Twitter(現X)
佐野さん個人のX
はてなニュース 「京都の地下鉄キャラクター「太秦萌」はなぜ“進化”した? デザイン会社と交通局に聞く制作秘話」
同 「「太秦萌」のイラストレーター・賀茂川さんに聞く! ラフ絵を交えた制作エピソード」←2014年の記事。名倉さん、磯貝さん、賀茂川さんが登場。
AERA DIGITAL 「経営難の京都市営地下鉄 女子高生キャラで改善なるか?」←2015年10月の記事
「バグかと思った」。鳴り止まない支援通知

CFのページを公開して、「翌日以降に支援額が増えていくのを確認すればいいや」と、自宅で休んでいた佐野さん。ところが、その途端、スマホの通知音が鳴り止まなくなったと、当時の様子を振り返ります。
佐野:「支援が1件入るたびに、魚雷映蔵へメールが届く設定にしていたんですよ。最初は何かのバグだと思いました。スマホの通知がずっと鳴っているので、やばいと思って調べたら、『支援が入りました』というメールが止まらない状態だったんです」
間もなくMakuakeの菊地さんから電話があり、ストレッチゴール設定の打診を受けることに。結果的に、開始2時間で支援金額100万円を達成、翌日3月19日には260万円を超えていたとのこと。「正直、僕も含めて、関係者の誰もがこんなに反響があると思っていなかったので、Makuakeさんとの調整や、京都市交通局さんへの報告や説明も大変でした(笑)」と、佐野さんは当時の盛り上がりを振り返ります。
ストレッチゴールの設定が追いつかない!

3月20日、プロジェクトページには「想像を大きく超える反響とご支援」を理由とする計画変更が掲載されます。当初は、5月29日の「地下鉄の日」に完成版を公開する予定でしたが、作品の規模を拡張するため、その日は制作報告会へ変更。アニメの完成時期を後ろへずらすことになりました。Makuakeと相談しながら、400万円、500万円、600万円と、追加のストレッチゴールを設けるも、追加ゴールを発表する前に、支援額がその金額へ到達してしまうという状況に。

佐野:「例えば『600万円ならこれを作ります』と公開する前に、支援額がどんどん膨らんで、結果的に目標を後出しするような状況でした。途中からはこちらも成す術がなく、あとはなるようになれと思っていました」
4月26日の募集終了時点で、支援者は648名、支援総額は1,042万2,000円に達しました。当初、2015年の京まふのときに考えていた、「200人が1万円ずつ支援すれば200万円」という計算を、はるかに上回る結果となり、プロジェクトは幕を下ろしたのです。
関連リンク
exciteニュース「京都市営地下鉄のキャラクターを使ったアニメ企画にクラウドファンディングに支援殺到」 ←2016年CF時の佐野さんへのインタビュー記事。
Yahoo! ニュース「京都の女の子を、ご当地キャラ化して大人気。『地下鉄に乗るっ』の絵師・賀茂川に聞くヒットの理由。」 ←2017年、賀茂川さんへのインタビュー記事。
1,000万円は、決して「余裕」ではない

支援額が当初想定の10倍になると、制作にも十分な余裕が生まれるように思います。しかし実際には、支援が伸びるにつれて作品を長くし、リターンも拡充するなど、企画そのものを大きくしていくことになります。そうなれば、作業量も制作費も増えていく……というジレンマがあります。
佐野:「200万円で2分作るなどと言っている以上、1,000万円集まったら残りをどうするんだという話になります。期待に応えなければという気持ちが強く、作品の分数を長くしていきました。でも、それは自分たちの首を絞めることでもありましたね……」
制作の一部を外注したり、支援者に届けるリターン品を豪華にしたりした結果、最終的には大赤字だったと佐野さんは振り返ります。しかし、ファンの気持ちに応えること、そして制作側としても納得できるものを作ろうと、採算度外視でプロジェクトは進められていきました。
アニメは約10分に拡大して制作

2017年12月、京都シネマで行われた上映会
その後も制作は長引き、最終的な完成は翌2017年5月となりました。アニメ本編は約10分に拡大して制作され、初めは支援者向けのイベントなど、限られた場所で公開されていました。そして同年12月23日、四条烏丸の京都シネマにて、ついに広くお披露目されます。さらに2018年5月には、京都市交通局の公式YouTube上にもCFで作られたアニメが公開され、世界に向けて発信されました。2026年8月現在、YouTube上では66万回以上再生されています。
財政的な面で見ればたとえ赤字でも、「地下鉄に乗るっ」の盛り上がりが複数のメディアで紹介されたことに加え、ファンの交流が活発化したことで、認知拡大とコミュニティー形成の面でプロジェクトは大成功を収めました。佐野さんは、「地下鉄に乗るっ」のCFがきっかけで魚雷映蔵の名前が知られ、新たな仕事にもつながったと振り返ります。何よりも、様々な人たちを巻き込んで大きな企画を動かした経験は、現在も佐野さんと魚雷映蔵が「地下鉄に乗るっ」に関わり続ける礎になっています。
関連リンク
魚雷映蔵 京都シネマでの上映についてのページ
CharaLab 京都発のご当地キャラ『地下鉄に乗るっ』がアニメに!劇場公開決定! ←CF後に行われた佐野さんへのインタビュー記事。
同 満員御礼!短編アニメ『地下鉄に乗るっ』アフタートークショー ←京都シネマでのレポート記事。
京都市交通局YouTube CFで作られたアニメ本編
ローカルコンテンツが、階段を上った瞬間
「メジャーになったという言い方が正しいかは分かりません。ただ、一つのローカルコンテンツから階段を上がり、次のステージへ行った出来事だったと思います」と、佐野さんは、2016年のCFを、「地下鉄に乗るっ」が次の段階へ進んだ出来事として位置づけています。
制作会社である魚雷映蔵や佐野さんだけが仕掛けた成功ではなく、京都市交通局やGK京都、Twitterで作品を見つけた人、京まふへ足を運んだ人、クラウドファンディングに参加した人が、それぞれに企画という波に乗り、当初の計画を超える流れを作っていったのでした。
100万円で30秒のアニメを作るという小さな目標に、支援が次々と注ぎ込まれ、企画そのものが変化していきました。制作側が用意した場所にファンが集まり、その参加によって当初の計画を超えていく。このCFは、「地下鉄に乗るっ」が制作者だけでなく、ファンとともに育つコンテンツであることを示した出来事だったのかもしれません。
10年前の支援者や関係者と、もう一度振り返りを

2026年9月20日に開催される10周年記念イベントでは、2016年のクラウドファンディングに参加した支援者648名全員が無料招待の対象となっています。佐野さんとともに登壇するのは、「地下鉄に乗るっ」初期のコンセプト設計とキャラクター展開に携わった元GK京都の磯貝さん。
実は、磯貝さんはCFが始まる時点でGK京都を離れていました。そのため、プロジェクトの実行主体ではありませんでしたが、その後も魚雷映蔵の相談に乗りながら、CFからアニメ完成に至るまで、後方から支援していた人物です。また、Makuake側の担当者だった菊地凌輔氏もゲストとして参加する予定。
この記事では企画・制作を担った佐野さんの視点を中心に紹介しましたが、当日のイベントでは、初期展開に携わり、GK京都を離れた後もプロジェクトを陰で支えてきた磯貝さん、プラットフォーム側で担当した菊地さんの証言も加わります。それぞれの立場から、2016年の出来事がどのように見えていたのかが語られることで、当時の状況がより立体的に浮かび上がりそうです。
佐野:「2016年の出来事は、こちらが一方的に仕掛けたものではなく、ファンの人たちが乗ってくれたことで生まれました。当時の支援者の皆さんと10年の節目を振り返り、現状を整理しつつ、『これから』のことも話せる機会にしたいと思っています」
裏側をひっそりと語るのではなく、当事者であった自分たちが主体となり、ファンの人たちと必要な時間を共有して語り合う……。そんな想いが、今回へとつながっているように感じます。10年前、佐野さんの手元の鳴り止まない支援通知の先で何が起きていたのでしょうか。まずはこの記事を読んでCFの背景を知ってから会場を訪れれば、「地下鉄に乗るっ」が歩んできた年月を、少し違った角度から見られるようになるかもしれません。
まとめにかえて:「地下鉄に乗るっ」アニメ制作CFを中心とした主な歩み【年表】
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2013年 |
京都市交通局の若手職員増客チームから生まれた「太秦萌」「松賀咲」「小野ミサ」のキャラクターデザインをリファイン。担当:GK京都(名倉・磯貝)、賀茂川。 |
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年度後半頃、GK京都から魚雷映蔵・佐野へ、翌年度のアニメCM制作について相談が寄せられる。 |
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2014年8月 |
京都市交通局公式YouTubeで、15秒CM第1弾の線画版を公開。 |
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2014年9月 |
京まふでフルカラー版公開、「声優魂 in 京まふ」にて声優決定。 |
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2014年10月 |
キャラクターボイスを加えたCM第1弾の完成版を公開。 |
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佐野が魚雷映蔵のTwitterアカウントからCMの告知を始める。 |
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2015年1月 |
CM第1弾の別音声バージョンを公開。 |
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2015年4月 |
2本目の15秒アニメCM「地下鉄に乗るっ アニメCM Ver 京都のまちは地下鉄で。」を公開。 |
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2015年9月 |
京まふにて佐野らが登壇。リアルとネットの繋がりを実感し、CF構想のきっかけとなる。 |
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2016年3月 |
Makuake上で「京都市営地下鉄の萌えキャラ『太秦萌』の、アニメを作るっ」を開始。 |
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2016年4月 |
CF終了。支援者は648名、支援総額は1,042万2,000円。 |
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2017年5月 |
CFによって制作されたアニメが完成、公開。 |
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2017年12月 |
京都シネマにて上映。 |
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2018年5月 |
京都市交通局公式YouTubeでアニメ本編を公開。 |
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2026年9月 |
10周年記念イベントをキャンパスプラザ京都で開催予定。 |
「地下鉄に乗るっ アニメ制作クラファン10周年企画『アニメを作るっ』から10年! いまとこれからを語るっ」開催概要

開催日:2026年9月20日(日)
開演:16:00(開場:15:30)
終演:17:20頃予定
会場:キャンパスプラザ京都 第3講義室
一般参加:2,000円
2016年クラウドファンディング支援者:無料招待
※事前申込・定員制
記念品:希望者のみ+1,000円「当時の貴重資料(登壇者のサイン入り)」
申し込みリンク:https://forms.gle/SATThm4J8V6rMqZv9
くわしくはコチラ
取材後記

筆者が「地下鉄に乗るっ」を知ったのは、記憶の限り「若手職員増客チーム」時代のイラストでした。私は2010年頃から通学のために京都市営地下鉄を利用しており、磁気券からICOCAに変わり、今日に至るまで、15年以上定期券を購入してきました。
休日に出かける際、手元にはいつも「地下鉄に乗るっ」のトラフィカ京カードがありました。3,000円分買うと3,300円分使える、300円もお得なありがたいカードでした。券面にはもちろん、賀茂川さんによる太秦萌たちのイラストが描かれています。当時の私は、萌、咲、ミサの3枚のカードを、駅にある回収箱に入れず、TCGみたいにして集めていたのが懐かしいです。駅には、今以上にポスターがたくさん飾ってあり、子供だった私に京都の風景を教えてくれました。
時間は過ぎ、10系の初期車が引退し、20系が走るようになりました。いつの間にか烏丸線の入線メロディが日常になっていました。主要駅にホームドアが設置されました。京津線の色が変わりました。接近表示機がフルカラー液晶に変わりました。券売機がボタン式からタッチパネルになりました。市バス一日券がなくなりました。外国人が増えました。オレンジジュースの生絞り自販機が設置されるようになりました。挙げればキリがありません。
私に言わせれば、ここ最近で地下鉄の景色は随分変わったと思います。アニメ「地下鉄に乗るっ」で描かれている改札機なんかも、もう使われていないですよね。それでも地下鉄の景色に変わらないものは、「地下鉄に乗るっ」のキャラクターたちのポスターがあり続けていることです。彼女たちは、毎日私と一緒に通学しているようで、ときには旅行から帰ってきた私を迎えてくれているように感じます。この感覚を、地下鉄を使っている方なら、共感していただけると思います。
現在、昔のように「地下鉄に乗るっ」を全面に押し出したポスター制作は行われていません。しかし、魚雷映蔵が新しい作品を京都市交通局へ寄贈することで、萌たちのポスターは駅などで掲出されています。私は、この景色をこれからも見続けたいです。また、伝統文化だけでない、「地下鉄に乗るっ」のような取り組みを続けていくことができる今日の京都の文化を、多くの方に知ってほしいと思います。


