京都発:マンガ・アニメ、映画・映像、ゲーム、クロスメディア、メタバースのポータルメディア

マンガを通して日台関係の歴史をみる。「台湾の少年と日本の少年~巡り合うマンガ文化の百年~」企画展レポート【京都国際マンガミュージアム】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

京都国際マンガミュージアムでは、2025年5月24日から6月24日まで、企画展「台湾の少年と日本の少年~巡り合うマンガ文化の百年~」が開催されている。

この企画展は、日本と台湾のマンガ文化が、百年にわたる歴史の中でどのように影響し合い、文化が育まれてきたのかを様々な角度から解き明かすものとなっている。

なお、開催に先立ってオープニングイベントが開催され、荒俣宏館長や王時思台湾文化部副大臣などが出席したほか、台湾伝統の布袋劇が上演された。そのときの様子はこちら

日台マンガのルーツ

日台のマンガの源流は、日本が台湾を植民地としていた時代にまでさかのぼる。本展は、20世紀の東アジア史をマンガという視点から概観するという意味でも、非常に興味深い内容となっている。

会場にはアジア圏以外からの海外のお客さんも多く、そのような方々に親しみやすいマンガを通じてアジア史を知ってもらうという意味でも、この展示会は作用しているようだった。

また、メインビジュアルには、アサギマダラという蝶があしらわれている。実は、アサギマダラは季節によって日本と台湾を移動する昆虫だそうだ。このように、日台の友好と文化の往来への思いが込められたものとなっている。

国際交流展を企画する難しさ

今回のような国際的な展示をする際、やはり一番の障壁は言語の問題だ、と担当者は教えてくれた。しかし、リアルタイムで翻訳できるツールを使うなどして、昔に比べればそれは随分楽になったようである。

本展を開催するにあたって、京都国際マンガミュージアムのキュレーターが二度に渡って訪台し、様々な資料を検討した。「歴史の展示ということで、実物を見て展示品を選ぶことが重要でした」と、当時の様子を振り返る。

それ以外にも、両国の歴史認識の差異にも注意しなければならない。『日本のマンガがすごい』というステレオタイプな結論に行きつくのではなく、有名・無名を問わず様々な作品を検討し、今日のマンガ史に繋がっているということを概観できる展示にできるように注意を払ったとのこと。

ふたりの「少年」

本展では、日台マンガ交流の中心人物として、手塚治虫(1928~1989)と焜霖(サイ・コンリン 1930~2023)が取り上げられている。

手塚はマンガ家としてだけでなく、アニメ制作者としても非常に功績をあげた巨匠として知られている。一方で、蔡の名前を初めて聞いた方は多いかもしれない。彼は台湾の実業家で、後に雑誌編集者を務めるようになる人物。台湾のマンガ文化に大きな足跡を残した。

様々な資料を見るだけでなく、実際に手に取って読めるマンガの展示も多い。「やっぱりマンガって読んでみないと面白さが分からない部分があるんで」と、担当者の方は言う。

現代の作家が紡ぐ、新たなマンガ表現

現代の日台の若手作家として、川勝徳重と高妍(ガオ・イェン)による描き下ろしマンガ作品も展示されている。これは、かつて手塚と蔡が日台マンガの地位向上に奔走したように、現代の作家たちが海を越えた文化交流をどう捉え、表現するのかを示すものだ。海を越えた交流ができることの尊さを改めて認識できた。

様々な縁が絡み合って実現した今回の描き下ろし企画。「展覧会のコラボとして描くレベルのものではないぐらいの熱量のものを描いていただいたので、これは是非、今の若い人たちに読んでもらいたい」と、担当者は熱を込めた。

現在、このマンガは本企画展でしか見られないものとなっている。ぜひ京都国際マンガミュージアムに足を運んで、二人の作品を読んでみよう。

日台マンガの未来

企画展の最後には、現在と未来の日台マンガの在り方を考える展示が示される。例えば、哈日族(ハーリーズー)という、日本文化愛好者の人々のコミュニティーが形成されていることが紹介され、日台文化が深く交わっていることが示されていた。

本企画展が7月以降に巡回する、台湾にある國家漫畵博物館の紹介も行われた。この博物館は、日本の植民地時代に刑務所として利用されていた跡地にあり、2023年にプレオープンしたばかり。台湾マンガ文化の発信地として、その役割が期待されている。

マンガを読み、歴史に思いを巡らせる

「日本の人たちは、マンガがすごい好きで、詳しい部分がある反面、今回の展示のような歴史的な面では知らないことも多いと思います」と、担当者。本展は、手塚治虫と焜霖という二人の「少年」を中心に、海を越えた日台文化の交流の奥深さからマンガ史を見つめ直すことができる機会だ。

また、「歴史として全てが繋がっていて、今があるということを知っていただけると、マンガの見方も結構変わってくるのではないかと思う」と、歴史を知ることの意義を説いた。

本企画展のタイトルにもある「少年」は、多義的に捉えることができる。百年の歴史の中で育まれてきた日台マンガの足跡を巡ることで、文化の持つ力強さを見つけよう。京都国際マンガミュージアムで、ぜひその軌跡を体感してほしい。

企画展のホームページはこちら

京都国際マンガミュージアム

〒604-0846
京都市中京区烏丸通御池上ル (元龍池小学校)
TEL: 075-254-7414 
FAX: 075-254-7424

開館時間 10:00~17:00(最終入館時刻: 16:30)
入館料 個人: 大人1200円 中高生400円 小学生200円
休館日 毎週水曜日(休祝日の場合は翌日)、年末年始、メンテナンス期間
※休館日、開館時間は予告なく変更する場合がございますので、予めお問合せください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

雨森ライター

投稿者プロフィール

京都歴22年目。KYOTO CMEXの一員として、地元目線からのディープな情報を発信。写真も自分で撮っています。

この著者の最新の記事

「KYOTO CMEX」ポータルサイトでは、マンガ・アニメ、映画・映像、ゲーム、クロスメディアの情報を発信する京都発のポータルメディアです。SNSをフォローして掲載情報をチェック!(情報募集

ピックアップ記事

マンガを通して日台関係の歴史をみる。「台湾の少年と日本の少年~巡り合うマンガ文化の百年~」企画展レポート【京都国際マンガミュージアム】

マンガを通じた日台友好は、かつての少年たちが切り開いた歴史。「台湾の少年と日本の少年~巡り合うマンガ文化の百年~」オープニングイベントレポート【京都国際マンガミュージアム企画展】

【公式イベント情報】「BitSummit the 13th」最新情報!「しんじさん」など人気配信者・クリエイターたちの参加決定&その他情報も!

【公式イベント情報】京都で開催の国内最大級インディーゲームイベント「BitSummit the 13th」チケット販売開始&スポンサー企業様・企業出展に関する情報公開!(開催期間:2025/7/18~7/20)

京都から自作ゲームを発信しよう。クリエイターと企業が出会う場【OPEN GAME FEST】現地レポート

【公式イベント】アニメ、マンガ、キャラクターなどを活用した、優れた企業コラボレーションや広告プロモーションを表彰するアワードイベント「アニものづくりアワード2025」開催決定&6/30までエントリー受付中!

【公式イベント・クリエイター支援情報】時代劇・歴史劇ジャンルの映画企画コンテスト「2025年度第17回京都映画企画市」の企画募集が開始!(応募〆切:2025/7/15)

【みやこめっせ 行き方】京まふや同人誌即売会の会場、みやこめっせへのアクセス方法を写真付きで詳しくご案内!

増えるポケモンは?2025年7月リニューアルする「ポケモンルーム」の最新情報をMIMARUスタッフさんに聞いた!京都で100匹のポケモンとお泊まりしよう♪

ページの中で、盤上で。響きあう二つの世界の共演【マンガとボードゲーム展】京都国際マンガミュージアム企画展レポート

【公式イベント】西日本最大級のマンガ・アニメ・ゲームの祭典『京まふ2024』開催決定!9/21(土)・22(日)みやこめっせを中心に開催!メインビジュアルや出展者申込情報公開中!

ポケモンルームが2025年7月リニューアル‼100匹のポケモンと泊まれるファンが痺れる空間に【京都市内3施設も対象】

【サンライズクリエイション京都2025春】桜満開・春の京都で観光も兼ねた合同同人誌即売会はいかが?

【NT京都2025】ガチ技術×ゆる~い交流=可能性無限大の博覧会! ニコ動発・クロスメディアの祭典を君の発明で創り上げよう

きかんしゃトーマスが京都鉄道博物館にやって来た!原作出版80周年「きかんしゃトーマスの世界展 ~はたらく機関車たちのおはなし~」へ出かけよう

全て表示

2025年度の人気記事

『アイドルマスター シンデレラガールズ』がレジャー施設・温浴施設とコラボレーション 全国お出かけ周遊イベント「レジャフェス」第3弾が6月4日よりスタート

京都の社長のみなさん!あの「リアル桃鉄」が京都府に初上陸! ついに京都でスケールアップして新たな冒険へ!

きかんしゃトーマスが京都鉄道博物館にやって来た!原作出版80周年「きかんしゃトーマスの世界展 ~はたらく機関車たちのおはなし~」へ出かけよう

ページの中で、盤上で。響きあう二つの世界の共演【マンガとボードゲーム展】京都国際マンガミュージアム企画展レポート

【アニメ・映画分野情報】京都は5月から!限定描き下ろしイラストの新作グッズ多数販売!映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』 POP UP SHOP in ベースヤード開催!(開催日:2025/5/2~5/25)

全て表示

人気記事ランキング

ついに鶴丸がやってくる!聖地・藤森神社での太刀「鶴丸」(写し)の奉納・展示がまもなくスタート!

10月6日までイベント開催中!【鬼滅の刃 京ノ御仕事】東映太秦映画村でのコラボをご紹介!

京都通になれる!?TVアニメ『京都寺町三条のホームズ』聖地巡礼

「孤独のグルメ」原作者:久住昌之氏、「FFシリーズ」生みの親:坂口博信氏が登壇するセミナー、京都で開催!【10/16・30、参加費無料】

寺町三条のホームズ原作者、望月麻衣先生独占インタビュー&聖地巡礼!

平安貴族は〇〇を見せない?若者の服は〇色!?「光る君へ」マンガ「あさきゆめみし」が100倍面白くなる!京都文化博物館【紫式部と『源氏物語』】学芸員さんに話を聞いてきたパート2

京都通になれる!?TVアニメ『京都寺町三条のホームズ』聖地巡礼 その2

アニメ『有頂天家族』の聖地としても有名な京都の下鴨神社でみたらし祭開催中【07/30まで!】

巡ってわかる、心の距離。TVアニメ『月がきれい』聖地巡礼~前編~

【映画・歴史好き必見】東映太秦映画村の魅力をどどんとご紹介!新選組隊士の殺陣や実写映画『銀魂』等様々なロケが行われているオープンセット、仮面ライダー立像の撮影も可能!

全て表示

カテゴリ一覧

種類別カテゴリ

ジャンル別カテゴリ

年別記事一覧

ページ上部へ戻る