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【マンガ出張編集部】京まふが新人マンガ家を全力支援! 原稿持ち込みイベントの現場を密着取材レポート
- 2025/12/24
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2025年11月15日と16日、京都国際マンガミュージアムで「マンガ出張編集部」が開催されました。
「京まふ」の関連企画で、約50の編集部が京都に集結し、マンガ家志望者が持ち込んだ原稿を直接講評する本イベント。この記事では、会場の様子に加え、実際に持ち込んだ2名の若いクリエイターに密着取材しました。プロの編集者からどのようなアドバイスが得られたのか、リアルな体験と成長の瞬間をレポートします。
京まふ「マンガ出張編集部」とは?
本イベントは、京まふ(京都国際マンガ・アニメフェア)の一環です。全国のマンガ家志望者が自身の作品を持ち込み、編集者から直接アドバイスを貰える機会を提供することで、クリエイターのデビューやスキルアップに繋げることを目的としています。持ち込みの企画だけでなく、編集者による座談会やデジタルマンガ制作ワークショップも併催され、2日間で多くのマンガ家志望者が京都国際マンガミュージアムに足を運びました。
京まふの開催趣旨のひとつに「クリエイターの育成支援・雇用機会の創出」が挙げられます。京まふは、9月に閉幕したみやこめっせでの展示・イベントだけでなく、京都にある様々な文化資産を活用しつつマンガ・アニメ・ゲーム文化を発信し、関西圏のコンテンツ市場を拡大する役割を担っています。
KYOTO CMEXは京まふの共催団体として、主に広報面からコンテンツ関連イベントを支援中。イベントの詳細や参加した出展者については、京まふのHPをご覧ください→https://kyomaf.kyoto/contents/professional/
2日間で約50の編集部が京都に集結

会場には、約50の有名なマンガ編集部がブースを並べました。各ブースの前には、編集部の代表的なマンガ作品や雑誌などが置かれ、手に取って確認できます。京都国際マンガミュージアムへの入館料は必要ですが、持ち込み自体は無料で参加可能。
ブース内には編集部のスタッフが2人ずつ常駐し、持ち込み希望者はエントリーシートと一緒に原稿を見てもらう、という形式です。持ち込む原稿は、完成作品はもちろん、ネーム(下書きのようなもの)や、同人誌などもOKなので、気軽に参加できるのも本イベントの特徴のひとつ。
イベント当日は幅広い年齢層の持ち込み希望者が自信作を手にし、京都国際マンガミュージアムに来館していました。普段何気なく読んでいるマンガですが、実際に多くのクリエイターが集まる場面を目の当たりにし、マンガ文化の裾野の広さを実感させられます。
新人マンガ家に密着

ここからは、駆け出しのマンガ家の二人に密着する形で、「マンガ出張編集部」のイベントの内容を詳しくレポートしていきます。
今回KYOTO CMEXの取材に協力してくれたのは、BONSAIさんと、林藤安価(りんどうあんか)さん。普段は京都の大学でマンガを専攻し、年2回の制作課題を目標に、創作の方法論やノウハウを学んでいるそうです。今回持ち込んだ原稿も、2025年の前期に提出したばかりの最新作。
嵐山を舞台にしたマンガ『言葉の手綱』

BONSAIさんは現在色々なジャンルに挑戦しているそうで、今回は自身の創作の幅を広げるために参加したとのこと。
マンガの創作において気を付けていることは、「気取らないことと、視野が狭くならないこと」だと教えてくれました。今回持ち込んだ原稿は『言葉の手綱』という作品。嵐山という身近な環境を、思い切って近未来という舞台設定に変え、想像力豊かに表現した作品です。
作品には、上のコマのように、見覚えのある風景と未来的なオブジェクトが融合した世界観が表現されています。「近未来でも変わらず在り続ける嵐山の自然の風景を描いているときは、こころが穏やかになりましたね」と、この景色に筆者が感じた懐かしさの理由をBONSAIさん自身から説明を受け、創作の楽しさを垣間見られる瞬間を共有してもらいました。
人間の優しさを耽美的に描く『偶像の少女』

林藤安価さんが得意とするのは、人間関係や感情の表現に焦点を当てた「ヒューマンドラマ」というジャンル。持ち込んだ原稿『偶像の少女』は、羽の生えた少女と、そうではないふたりの葛藤と受容をテーマに描いた作品です。
「昔からマンガを描いていたわけじゃないんです」と、林藤安価さんからは意外な発言が。自身の記憶の内省やインターネット上に溢れる人の意見に対して「自分はこう思う」を表現するメディアとして、マンガを選んだと語ります。繊細なタッチで描き出される登場人物や、静かに、時に感情的に展開される会話が、筆者を作品の世界に誘いました。
会場に着くと、二人は取材が入ることもあり「緊張します」と、硬い表情でエントリーシートを記入。それぞれ気になる編集部のブースへ向かい、原稿を手にしてそのときを待ちます。
編集者から受けたアドバイスとは実際……?

マンガ編集者からは、林藤安価さんが得意とする人間関係の耽美的な表現を高く評価してもらうことができました。上のような登場人物の座る様子の描き方の違いからも、作者の意図を察することができ、記号的にも視覚的にも読みやすい作品だと感じます。
そのうえで、作品の持つ美しい雰囲気を残しつつ、テーマである人間関係を深く表現するために、「ドキッとする言葉が欲しい」というアドバイスが。唯美的な人間関係の裏にある生々しいセリフを加えることで、作品をよりユニークなものにする可能性を示す、編集者ならではの的確な一言でした。
「作中の人物を実際に眺めている視点に立ったり、目が合ったように感じたりしてもらえると嬉しいです。今回の出張編集部で得ることができた気づきなどを踏まえて、読んだ人の心が大きく動くような、よりよいマンガを作っていきたいです」と、林藤安価さん。今回の持ち込みをきっかけに、自身の長所や短所、目標を明確にすることができました。
『偶像の少女』は、「webアクション」に掲載中。続きが気になる方はぜひ、こちらから読んでみてください。
キャラクターをどう引き立てられるか?

マンガの表現は文字やストーリーだけではありません。視覚的な手段を用いて、読み手の理解を助けられるように様々な工夫がなされるメディアであり、その作者ごとの差異がマンガの面白さのひとつと言えます。
BONSAIさんの持ち込んだ原稿では、「キャラクターの作画が安定している」と嬉しい感想がありましたが、「せっかく安定しているのに、主人公の魅力が伝わってこない」と、アドバイスを受けました。作品全体を通してキャラクターの性格を伝えるのは大切です。加えて、コマ単位でその魅力をアピールできれば、読者にとってより親しみを持ってマンガを読み進められます。

コマ割りに関してはこちらのシーン。銃が登場し、身代わりに飛び込んできた「先輩」が撃たれる場面について、「次のコマへの移り方が唐突で、読者に不親切かもしれない」と、具体的なアドバイスを受けることができました。
以上のような助言を受け、BONSAIさんは次への方向性を決定できたようです。「5年くらいは読んでくれた人の頭に残る、強いキャラクター性を持ったキャラクターをつくることにしたいです」。
「マンガ出張編集部」の持ち込みを終えて

以前、東京で実施された持ち込みイベントにも参加した経験がある二人は、「京まふのマンガ出張編集部のほうが、より時間を割いて作品を見てもらうことができました」と振り返ります。イベントの趣旨の違いや人口差があるので単純に比べることは難しいですが、「ゆっくり丁寧に自分の作品を見てもらいたい!」という方は次回以降の参加をぜひ検討してみてください。
人気のブースには列ができ、待ちが発生する場面もありましたが、空いているブースではすぐに自分の原稿を読んでもらうことができていました。編集者のアドバイスや感想を一通り聞いた後、参加者からの逆質問も親切に対応してもらえるため、自身の原稿の長所だけでなく、問題点をも浮き彫りにすることができます。
勇気を出して参加してみよう

持ち込みを終え、筆者が感想を聞くと「厳しいことを言われることもありますが、それだけ本気で作品と向き合ってもらえているので、とても貴重な機会だと思います」と、二人は口をそろえます。実際、会場の雰囲気は、参加者同士のコミュニケーションが活発に取られており、筆者の想像していた、かたいものではありませんでした。
自身の作品の強みや課題を客観的に知ることができるこの場所は、若手クリエイターにとって大きな成長の糧となるはずです。「プロに見せるのは緊張する」という方も、まずは勇気を出して一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。今回取材に協力してくれた二人も、はじめは緊張していましたが、イベント終了時には納得できる成果を得られ、とても満足したと教えてくれました。
次回は、あなたの自信作が編集者の目に留まり、デビューへの扉が開くかもしれません……!


