「BitSummit 4th」2日目の様子をお伝えします。今日の京都は快晴の猛暑日でしたが、BitSummitが開催されている「みやこめっせ」会場内はとても快適でした。80を超える出展者や豪華ゲスト陣によるメインステージは壮観で、大勢の方が時間を忘れて楽しんでいました。以下、メインステージの様子を中心にレポートさせていただきます。
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10時~:Anne Ferrero氏の講演
ASSEMBLAGEのAnne Ferrero氏は、日本のインディーシーンを語る自作ドキュメンタリー『BRANCHING PATHS』を、2年間の取材を経て制作。会場スクリーンでトレーラーを放映し「良い作品を作れさえすれば世界中の人に遊んでもらえる」というメッセージを発信しました。この取材・映画の一番の目的は「日本のインディーシーンを表現すること」。1人で作っている人から大きな組織までさまざまなインディーシーンを取り上げ、同人シーンも含めて、業界の状況を発信しているようです。
配信プラットフォーマ―のPlayism水谷氏も登壇し、「本作の配信予定日は7月29日今月末。発売価格は980円(9.99$)。配信プラットフォームはSteam, Playism, iTunesを予定。この映画はゲームを作る人に勇気を与えてくれるし、遊んでくれる人には希望を与えてくれる映画となりますので、仲間のみなさんで一緒に観ていただければと思います」と、呼びかけました。
10時30分~:五十嵐幸司氏の講演
『悪魔城ドラキュラ』シリーズのプロデューサーなどで知られる五十嵐幸司氏。Kickstarterキャンペーンで成功して開発を進めている『Bloodstained: Ritual of the Night』をメインステージ上でプレイ。ただし、全部で4つの「縛りプレイ」選択肢から1つをTwitch視聴者投票より選択して決定。(4つの選択肢は「目の見えないIGA:目をつむってゲームをプレイする」(IGA=五十嵐氏)、「逆さまIGA:コントローラーを逆さまにしてゲームをプレイする」、「片足IGA:片足立ちでゲームをプレイする」、「敵を倒さずにボスだけを倒すただし、仕掛けを起動するためにどうしても倒さなければいけない敵のみ倒してよい」という条件の中からいずれか1つ。どの条件でプレイするかは、Twitchチャンネルでの投票結果を受けて決定することに。投票結果は「敵を倒さずにボスだけを倒す」に決定。司会のBen氏からは、さらに「5分以内にクリア」と「回復アイテム使用禁止」という条件も追加。会場スクリーンに映し出されたプレイを皆が見守る中、IGA氏は見事クリア!会場は拍手の渦に包まれました。Kickstarterを通じて生まれた本タイトルについて「このゲームはクラウドファンディングなしでは成り立たなかった」と感謝を表明。また、デモの完成度については「操作感やグラフィックなど、満足いくものができた」と語る一方で「チュートリアルをもっと丁寧に作りたかった。また、敵のチューニング等、もう少し時間があれば。会場の中でもプレイできるので、ぜひプレイいただき、感想等いただければ」と語りました。
11時~:Tom Happ氏の講演
Thomas Happ GamesのTom Happ氏の講演。探索型2Dアクション『Axiom Verge』が、開発期間5年間・すべて1人で開発し、商業的成功をおさめたゲームタイトル。メインステージでは開発秘話を語りました。
開発の最初の4年間はフルタイムの仕事後に開発に従事しながら。フルタイム後のソロ制作がうまくいった要因としては「楽しめていたかどうか」が大切であったとし、「ゲーム開発は仕事ではなく趣味として行い、テレビやマンガを見て過ごすよりも、ゲームを作っている方が面白かった」と語りました。特に「大変さは醍醐味」とし、外注については「一番おいしい部分を誰かに食べられるのは平気ではない」と語りました。
話題は開発上の困難に。最も難しかったことは、プログラミングやアートの部分ではなく、「自分がゲームを完成させられると信じること」、次に難しかったことは「やる気を持続すること」。最大の困難へ立ち向かうための勇気は、「天谷大輔氏(開発室Pixel)の『洞窟物語』からもらった」と語り、「自分以外にもこういう人がいるのならば、自分にもできるんじゃないかと、勇気づけられた」と語りました。また、やる気を持続するためのコツとして、「自分に厳しくし過ぎずに、制作の各段階を楽しむこと」、「自分があまりやりたくない物理演算部分についてはシンプルにして、自分がやりたい部分に時間をかけるようにした」と語りました。資金面については、契約締結まではフルタイムの仕事をやめないことや、コストを計算して予算の見通しを立てること、キックスターターでの資金調達は最後の砦として他の資金方法(例:国の援助)についても模索することなどが挙げられました。
11時40分~:水口哲也氏&西健一氏の講演
「Rez」などで知られる水口哲也氏(KEIO MEDIA DESIGN)と「moon」などで知られる西健一氏(Route24)との対談。水口氏は、10月13日のPlayStation VRの発売と同日に『Rez Infinite』の発売を控える。西氏は、スマホ用穴掘りアクションパズル『ルナたん ~巨人ルナと地底探検~』の開発を進めている。
話題はVRへ。水口氏は「VRはデバッグが大変」と語り、「プレイヤーが酔ったり気持ち悪くなったりするようなポイントはあってはならないため、何度もデバッグを繰り返していると、自分自身の身体のダメージもくる」と語りました。また、「インディーゲームデベロッパーは、ただ作るだけではなく、周囲にいる人に、権利系のことや資金のこと、リスク管理のことなど、いろんなやり方について学んでいかなくてはいけないと思っている」と語り、西氏は「ゲームを作ることが喜びというだけでは、作り続けることが大変になってくることがある。開発中には、権利関係や流通のことまで考えられなかったりするし、水口さんや僕は、そういう苦労をあんまりしていないように見えるかもしれないけれど、そんなことはないので、経験したことを若い方に伝えていかないといけないですよね。」と語る。
続いて、インディーゲーム業界について。水口氏は「やりやすい、良い時代がきたと思っている。アメリカで会社を作るのも、日本とあまり変わらなくなり、日本で会社を作らなければいけない、という縛りもなくなってきた。以前なら流通に乗せたりするコストや在庫のリスクがあってできなかったことも、今ならクリアできる。インディーゲームにチャンスが巡ってきた」と語り、西氏は「昨日一日中BitSummitの会場を見て回ったが、すごくクオリティが上がってきている。スケール感で言って大作というのは難しいが、クオリティは普通に売られているものと変わらないものがバンバン出てきているから、すごいことになっていると思う」と驚きを表明した。また、時代の変化について、水口氏は「これまでは、頭の中でどれだけすごいことを描いていても、最終的には四角い枠に収めなければいけなかった。VRのすごいところは、その制約がなくなったところ。テレビも映画もゲームも全部、四角い枠という制約があった。それがなくなるという変化の中で、新しいものを作りたいという分水嶺がやってきている。VRでインディーは加速する」と語り、「これから生まれてくるインディーの人たちが、次の10年後に、主流を築いている可能性が高いと思う」と開発者へのエールを送りました。会場から、VRの怖さやマイナスの部分に対して質問が挙がると、「プレイヤーとしての、そういう感覚は理解できる。開発者としては、そのマイナスの点をデバッグし、超えていくことが役割だ」(水口氏)と語り、新しい領域を切り拓いていく姿勢を表明しました。
12時40分~:IGN Japan Presents クリエイター対抗クイズバトル
IGN Japan Presentsの司会で進行する4名の登壇者を迎えて展開するクイズバトル。水口哲也氏(エンハンス・ゲームズ)、マット パパ氏(インティ・クリエイツ)を「TEAM BIT」、SWERY氏(「レッドシーズプロファイル」、「D4」ディレクター)、ジェイク カズダル氏(17-BIT)が「TEAM SUMMIT」の2チームに分かれてのクイズバトル。
第1ラウンドはトリビアラウンド。「BitSummit初開催の年は?場所も答えられたらボーナス」、「昨年のBitSummit受賞タイトルは?」、「Kickstarterで出資を募ったゲームのうち、過去最大の資金調達額は?」、「吉田修平氏が任天堂Wiiを何台所有しているか」、「FF15に登場しない料理」などバラエティーに富んだ設問。「TEAM BIT」が4点、「TEAM SUMMIT」が8点と大差をつける。第2ラウンドのテーマは「インディーゲーム ホール・オブ・フェイム」とし、ゲーム概要からゲームタイトルを推測して回答する形式。BitSummit出展タイトルを中心に、『洞窟物語』(開発室Pixel)などインディーゲームタイトルが問題となった。第3ラウンドのテーマは「開発者はつらいよ」。「ゲームリリース1週間前に重大なバグを発見した、あなたならどうしますか」、「SNS担当者が誤ってリリース前のゲームの大きな秘密をTwitterに投稿。大きなサプライズが台無しになり、ファンを悲しませてしまいました。どう乗り切りますか」などの問題に対して、バラエティーに富んだ回答が会場を沸かせていました。最終的には、第3ラウンドで大量ポイントを獲得した「TEAM BIT」が勝利。全体的にゆるい雰囲気が会場を笑いに包んでいました。
13時30分~:須田剛一氏&飯田和敏氏の講演
話題は「インディーゲームとは何か」。お二人の過去に触れながら開発者へのエールへ。飯田氏は「いつか自分のゲームを作って世に問うまでは、やめるもんか。負けないぞ、負けないぞ」とかつての想いを語り、須田氏「最初の1発目は、自分の投影。パーソナルなゲーム。1発目は燃え尽きるくらいやらないとブレークスルーはない。問題は、2作目やその後」と語りました。
開発を継続し、生き残っていくということについて、飯田氏は「残酷なことを申し上げれば、あのころは良かったのに、今はどこへ行ってしまったのだ、という人はいる。そうならない、つまり、生き残っていくためにはどうしたらよいか。」、「今のような起業ブームということではなく、やりたいことをやるためには、自分で環境を作り、みんなで金を稼いで作る、茨の道でした。皆さんに、頑張ってと言いにきました」と語りました。須田氏も、「お金勘定や資金繰りなど、できるだけ早く経験してほしい。白馬の王子様はいなくなる。そういう時代を通過してきた。時には傷つけられ、励ましあい、分かち合いながら、どんどん皆さんタフになっていってほしい」とご自身の経験を交えて語り、両氏が「これまでにいろんな人たちに支えられてこの場所に立っている。今日がハッピーでも、問題は明日以降。へこたれそうなときは、我々に声をかけてくれ。いろいろ経験しているから、ちょっとしたアドバイスができる」とエールを送りました。
14時10分~:Chris Charla氏の講演
ID@Xboxプログラムの紹介。独立系のインディーゲームデベロッパーが利用できるプログラム。「リリースしやすいプラットフォームを作って、できるだけ開発者がゲーム自体の開発に集中できるようにしている」と、開発者に向けて説明しました。
登録からパブリッシュに至るまでのプロセスは、登録(要:法人格)、企画提出、開発キット配布&開発、承認プロセスを経てゲームリリース、という手順。SNSや各種イベントでのプロモーションについてもサポートが受けられるとのこと。例えば、リリースのタイミングについて、有名なタイトルとリリースのタイミングに重ならないようにしたり、メインビジュアルやスクリーンショットのクオリティを高めたりなど、売上にかかわる重要な部分についてXboxチームからのサポートを受けられるとのことです。「ぜひ日本のインディーゲームデベロッパーが世界へゲームを発信するために使っていただければ」と話しました。
15時10分~:I am Robot and Proud ライブ演奏
「I am Robot and Proud」は、カナダ出身のショウハン・リーム (Shaw-Han Liem)氏による一人プロジェクト。ステージ上での演奏とスクリーン上でのムービーを連動させたエレクトロニカサウンドが多くの観衆の心を掴んでいました。
16時~:クロージング・セレモニー
審査結果の発表・各アワード授賞式が行われました。総評として、ジェームズ・ミルキー氏から「毎年だんだん来てくれる方が増えてきてくれるし、ファミリーで来てくれている人も増えてきている。その姿を見ると、このイベントは良い方向に向かっていると思う。このイベントの成功は、参加者と開発者のおかげ。毎年、ゲームのクオリティが高まってきていると感じる。来年は5周年なので、大きなことがしたいと思います。期待してください。心から感謝しています。来年も是非いらしてください」と挨拶がありました。
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以上、「BitSummit 4th」のレポートをお読みいただき誠にありがとうございました。来年もぜひご参加ください。
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