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【(再掲)公式イベント】ANA NEO株式会社代表取締役社長:冨田光欧様が語る「旅から始まるメタバースによる地域創生とデジタルツイン社会の実現」。第2回コンテンツクロスメディアセミナー開催報告
- 2022/12/29
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KYOTO CMEXの公式イベント:「コンテンツクロスメディアセミナー」。2022年度の第2回目のセミナーを2022年10月24日(月)にANAクラウンプラザホテル京都にて開催しました。今回のセミナーでは、ANA NEO株式会社代表取締役社長である冨田光欧様を講師にお迎えして、「旅から始まるメタバースによる地域創生とデジタルツイン社会の実現」というテーマについてご講演いただきました。 ※当記事は11/25に掲載した記事を再掲しています
冨田様が代表取締役社長を務めるANA NEO株式会社は、ANAを中心とするANAグループの一員で、メタバースによる旅を提供している会社です。講演は、冨田様ご自身の略歴と、ANAがメタバースに取り組むことになった経緯の説明から始まりました。
冨田様は技術職としてANAに入社。その後マーケティング部門に異動し、マーケティング関連のさまざまな業務を担当されました。航空会社のマーケティング部門は、フライト計画の立案から座席の配分、運賃の決定などを行なう、収入に責任がある役割を担う部署です。
しかし、航空会社の収入はテロや災害などの世界的な事件に大きく左右されます。特に2000年以降はアメリカ同時多発テロやリーマンショック、東日本大震災など、収入が増えたかと思うと事件が起きて旅客数が、ひいては収入が減るのを繰り返しています。安定した収入を得ることはANAや冨田様にとって大きな課題のひとつでした。
このような状況の中、冨田様はJP GAMES株式会社の代表取締役CEO田畑氏と出会います。田畑氏との話を通じ、冨田様は現実世界の影響を受けにくいデジタル世界での旅行は、より安定した収入源になるのではと考えたそうです。
航空会社とゲーム会社にはまた、個人の体験にフォーカスしたマーケティングを行なうという共通点もあります。タッグを組めば事業としても伸びると考えた冨田様は、バーチャル旅行のプロジェクトを立ちあげました。これが2019年のことです。そして翌年2020年8月にはANA NEO株式会社が設立され、旅を軸としたメタバースの構築が本格的にスタートしました。
続いてお話のテーマは、ANA NEOが開発しているメタバース空間「ANA GranWhale」へ。ANA GranWhaleには、旅のエリアである「スカイパーク」、ショッピングエリアである「スカイモール」、バーチャル生活の場である「スカイビレッジ」の3つのエリアがあります。このうち、スカイパークとスカイモールの2つのエリアが、今年度中のリリースを目指して開発が進められているそうです。
メタバースと言うとVRヘッドセットを使用するイメージがありますが、ANA GranWhaleはまずスマートフォンアプリとしてリリースされます。理由は、VRヘッドセットの普及率の低さ。VRヘッドセットは価格が高く、所有している人はまだまだ多くありません。こういったことから、まずは人口のほとんどが所有しているスマートフォンのアプリとしてスタートさせることにされたそうです。
メタバースの存続には「人が滞留する、リピートする」仕組みが必要です。そこで冨田様は、ANA GranWhale内にゲーム性やエンタメ性を持たせ、コミュニケーションが楽しめる仕掛けを用意されました。たとえばスカイモールやスカイパークは、同時に4人までのユーザーがログインして、チャットで会話しながらショッピングや旅を楽しめるようにしています。
さらにスカイパーク内には、観光スポットを再現した「Vトリップ」、街全体を再現した「プレミアムVトリップ」、ガイド付きのツアー「ストーリーツアー」の3つのエリアを用意。ニーズに合わせた旅を楽しめるほか、ストーリーツアーではまさに旅のストーリーを楽しめるようにするそうです。
また、スカイパークにはCGではなく実際の写真を加工して作成されたグラフィックを使用しているのですが、将来的には、ユーザーに自分のおすすめの場所を撮影しアップロードしてもらい、メタバース化することも考えているそうです。この仕組みがうまく機能すれば、ユーザーも一緒になったエコシステムを作れ、事業の持続性も高まるだろうという見通しも冨田様は示されました。
ANA GranWhaleは、まずは今年度中にスカイモールとスカイパークがスマートフォンアプリとしてリリースされる予定です。さらに将来的には、より没入感を味わえるVRヘッドセットでも利用できるようにするそうです。そして最終的には、教育・医療・行政などのサービスを利用できるプラットフォームとして、スカイビレッジをオープンしたいと冨田様は意気込みを語られました。
冨田様の話はさらに、メタバースからリアルへと広がっていきました。Vトリップを楽しんだあとに実際の旅行商品の提案を行なうなどして、リアルの行動に繋げる。ボーダレスなメタバース世界の活動や二酸化炭素排出量が低いバーチャル旅行を通じて、SDGsに貢献する。メタバースという新しい旅の形を通じ、地域創生に繋げる。地域の文化や景観をメタバース世界で再現し、アーカイブとして残すことで文化や伝統を再現・継承する。このような広がりを冨田様は想定していらっしゃるそうです。
地域創生には自治体や地元企業の協力が欠かせません。ANA NEOは2022年4月に、京都市や京都市のゲーム会社、株式会社トーセと京都市の資源・資産を活用しデジタルツイン社会の実現を目指す、連携協定を締結しました。さらに全国の地方金融機関との連携も進めています。
地方金融機関は、地域ごとの観光業者や小売業者などのネットワークを持っています。しかし同時に、地域の情報を発信し盛り上げていくための方法についての悩みを多く抱えているというのが現状です。ANA NEOが連携すれば、ANA NEOはGranWhaleで地元ならではのスポットをメタバース化したり、旅や特産品を紹介できるようになり、地方金融機関はメタバースを通じて地域の盛り上げをはかれます。
ANA NEOはすでに、北は稚内から南は沖縄まで全国の地方金融機関との共同関係を作っているそうです。このような関係を冨田様は「今後重要なスキームになる」と考えていらっしゃいます。
ANA NEOではまた、異業種の企業と共にメタバース空間内でのさまざまな実証実験を行なっています。具体例を2つ挙げると、損保ジャパンとはメタバースの世界で発生しうるリスクについて、パソナとはメタバースの中で起こりうるビジネスとそれに伴う雇用について研究しているそうです。ほかにも多くの企業から問い合わせがあるそうで、メタバースという新しい空間で生まれる新しい事業・顧客・雇用などについての研究は、すでに活発になりつつあることが伺えました。
「将来的には、異業種の皆さんと協働して新しい世界を作っていきたいというのが大きな目標。ご関心をお持ちの方がいらっしゃったら、ぜひいろんなお話をさせていただければ」という一言で一旦冨田様のお話は終了。ANA GranWhaleのイメージ動画や、プレミアムVトリップのイメージ動画、先日、京まふ2022(京都国際マンガ・アニメフェア)に出展されたときの様子などを交えたご講演は非常に興味深く、参加者も熱心に耳を傾けていました。
さらにご講演後は、予定時間をオーバーするほど多くの質疑応答に応じていただきました。参加者には観光・小売・エンタメ関連の業種の方も多く、会場には終始非常に熱気あふれる活発な雰囲気が漂っていたのが印象的でした。冨田様、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
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