京都発:マンガ・アニメ、映画・映像、ゲーム、クロスメディア、メタバースのポータルメディア

株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス理事:橋本真司様が語る「ゲーム業界の今後の可能性」。第1回コンテンツクロスメディアセミナー開催報告

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

KYOTO CMEXの公式イベント「コンテンツクロスメディアセミナー」。今年度の第1回目のセミナーを、2021年9月29日(木)にANAクラウンプラザホテル京都にて、株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス(以下スクエニ)の理事である橋本真司様を講師にお迎えし、開催しました。橋本様は株式会社バンダイ(当時)でゲーム開発に携わった後、株式会社スクウェア(当時)に入社。『FINAL FANTASY』シリーズなど多くの人気ゲームのプロデューサーを務めてこられました。今回のセミナーでは、自らのご経験に基づいて「ゲーム業界の今後の可能性」というテーマでご講演いただきました。

まずは、橋本様が関わってこられた主なゲームシリーズのご紹介からスタート。中でも代表作のひとつである『FINAL FANTASYFF)』シリーズについては、現在開発中の『FINAL FANTASY XVIFF16)』のトレーラー動画もあわせて上映していただきました。現在、FF16はメモリやテクスチャを最大限使い作りこんでいる最中だそうで、トレーラー動画も圧巻のハイクオリティ。開発チームも「限られた時間や予算でどこまで妥協せず作り込めるかという課題と向き合いつつ、世界最高峰のドラマを世界中の人に届けたい」と制作に取り組んでいる、というお話をいただきました。また、FFのほかに関わられたゲームとして『KINGDOM HEARTS』 『フロントミッション』や、『クロノ・トリガー』などの『クロノ』シリーズを挙げ、それぞれの思い出、思い入れやご自身が果たされた役割についてもご紹介いただき、橋本様の今までのキャリアの充実さを改めて感じました。


FINAL FANTASY XVIFF16)』トレーラー動画

 

続いては、ゲームや漫画のメディアミックスについて。橋本様はロールプレイングゲームについて「プレイヤーの人生観に溶け込んで、人生を支える。ゲームは生活必需品ではないけれども、心にとっては必需品」と考えておられるそうです。そして、現在世界中でヒットしている『NieR(ニーア)』シリーズの『NieR Replicant(ニーア・レプリカントver.1.22)』のプロモーション動画を上映。動画上映後、橋本様は『NieR』のストーリーやキャラを例に「キャラクターに強烈な個性がないとドラマは生まれない」とお話しされました。個性豊かなキャラを生み出すため、スクエニでは常に切磋琢磨して作り込みを行っているそうです。「世界中の会社もスクエニを超える個性的なキャラを作り込もうと努力をしている。私たちも負けられません」という意欲あふれる言葉が印象的でした。


NieR Replicant ver.1.22474487139…』プロモーション動画

 

こうして作り込まれたゲームやキャラクターの魅力は、ゲーム以外にも広がりを見せています。たとえば『NieR』は楽曲も人気で、コンサートを開催すると多くのファンが集まるそうです。また、スクエニ作品と異業種とのコラボもしばしば行われています。その例として紹介されたのが、FINAL FANTASY XIIIFF13)の主人公であるライトニングとルイ・ヴィトンの2016年春夏コレクションとのコラボです。ライトニングはこのコラボでルイ・ヴィトンのモデルとして、ルイ・ヴィトンの服を着てバッグを持ちました。こういった広がりの背景のひとつには、ゲームで育った世代のデザイナーが企業・ブランドの中心になりつつあることが挙げられます。

メディアミックス展開をしているのはゲームだけではありません。スクエニには出版部門もあり、『鋼の錬金術師』『王室教師ハイネ』『賭ケグルイ』などの人気作品を多く抱えています。こういった人気作品のほとんどはアニメ化・実写映像化されています。そのひとつの例として、『賭ケグルイ』の実写映画のトレイラー動画を上映していただきました。従来、こういった作品のメディアミックス展開はそれぞれで行っていました。そのため、たびたびバッティングやスタッフの取り合いが起きることもあったそうです。そこでスクエニはメディア・アーツ事業部を設置し、作品のIPを一貫して管理することにしました。その初代事業部長を務められたのが橋本様です。日本の輸出産業として漫画のIPは非常に注目度が高く、橋本様もコロナ禍前は世界中から講演してほしいという依頼を受けていたそうです。場合によっては動画を持参したり、漫画家の先生をお連れしたりして積極的に海外を訪れていたことなどをお話しいただきました。

それから、講演内容はゲームやハードの今後についてのお話へ。ロールプレイングゲームの制作にはストーリー、キャラター、アイテム、魔法、召喚獣などの作り込みが必要で、非常に手間がかかります。その上ハードの性能は年々進化し、ポリゴン数やテクスチャも増加、開発コストも増加の一途。開発コストに見合ったリターンを得られる可能性も低くなってきていて、「いかに開発費を回収していくか」を考えないと、会社自体が成り立たない状況になりつつあります。

現在、ゲームハードにはいくつかの種類がありますが、橋本様は、最終的にどのハードが勝つのかはまだわからないと考えておられるそうです。現状はNintendo Switchが圧倒的ではあるものの、PlayStation 5 も出荷即完売になるほどの人気を博しています。橋本様は、「PlayStation 5 がまだ十分に行き渡っているとは言いにくい状況である以上、まだ勝負はついておらず、今年のクリスマスから来年くらいまではまだまだ勝負の途中である」という見通しを示されました。

その一方で人気を集めているのが、様々なプラットフォームでゲームをデジタル販売・配信し、遊んでもらう方法です。特に最近はコロナ禍でステイホームが推奨されていることもあり、外出先やハードを購入しなくてもすぐに遊べるデジタル販売・配信は、さらに一般的になってきました。スクエニでも、スマートフォンなどで遊べるソーシャルゲームはもちろん、MMOMassively Multiplayer Online:大人数で同時に参加できるオンラインゲームやコンテンツ)のFINAL FANTASY XIVも好調。ゲーム会社にとっては、流通コストを抑えユーザーに直接ゲームを届けることができるというメリットもある方法です。

また、「コンテンツが足りない」という問題も。コンテンツは誰かが作り続けないといけません。動画サイトなどを利用して、個人でもコンテンツを発信できる時代になった今、コンテンツの評価ポイントはゲームの原点である「面白いか」「魅力的か」に戻っています。このような状況を指摘されたのち、橋本様は、日本のリソースで足りない場合は外国のゲーム制作会社の力を借りながら取り組んでいることを紹介。外国のゲーム制作会社もまた、日本のゲーム産業とともに仕事をしたいと考えているところが多く、ビジネスとしてはすごく広がりを見せているとお話しになりました。

最後に、橋本様はご自身の経歴について改めて触れられました。橋本様は学生時代、徳間書店のアニメ雑誌『アニメージュ』でアルバイトをされていました。学生の身でありながら名刺を持ち、アニメ業界の重鎮の方々に取材をしたこともあったそうです。この経験こそが、40年近くにわたり仕事を続けられた原点であると橋本様は考えておられるそうです。質疑応答では、ゲーム業界に就職を希望する学生の方へのアドバイス、日本のゲーム業界が持つ強み、長寿シリーズであるFFシリーズの魅力の理由、プロデューサー論など、硬軟さまざまな質問に対して時間が許す限りお答えいただきました。橋本様、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

KYOTO CMEXKYOTO CMEX実行委員会

投稿者プロフィール

京都シーメックスの公式イベントだけでなく、京都発のマンガ・アニメ、映画・映像、ゲーム、クロスメディアに関連する情報を発信してまいります。

この著者の最新の記事

「KYOTO CMEX」ポータルサイトでは、マンガ・アニメ、映画・映像、ゲーム、クロスメディアの情報を発信する京都発のポータルメディアです。SNSをフォローして掲載情報をチェック!(情報募集

ピックアップ記事

平安貴族は〇〇を見せない?若者の服は〇色!?「光る君へ」マンガ「あさきゆめみし」が100倍面白くなる!京都文化博物館【紫式部と『源氏物語』】学芸員さんに話を聞いてきたパート2

500年以上前の「源氏物語(写し)」が【京都文化博物館】で見られる!!「光る君へ」マンガ「あさきゆめみし」が100倍面白くなる【紫式部と『源氏物語』】学芸員さんに話を聞いてきたパート1

映画プロデューサー:齋藤優一郎様が語る「アニメーション映画が切り拓いてきたこと、そしてこれからの未来」とは? 第2回コンテンツクロスメディアセミナー開催報告

【京まふ2023】 現地レポート『地下鉄に乗るっ』10周年スペシャルトーク&LIVE

【京まふ2023】“京まふおこしやす大使“伊東健人さん&高橋李依さんへの特別インタビュー!!

【京まふ2023】京都国際マンガミュージアムへ!

作曲家・桶狭間ありさ氏 京伴祭インタビュー(京まふ2023連携企画)

【京まふ2023】古都コス出演者に突撃インタビュー!

【京まふ2023】「カノジョも彼女 Season 2」京まふステージ開催!上映PVでは古賀葵演じるミリカの妹がボイス初解禁に

【京まふ2023】TVアニメ「有頂天家族」10周年スペシャルステージ開催!弁天役の能登麻美子が第3期を熱望

【京まふ2023】キャラクターたちがお酒に!?白糸酒造のグッズを見に行ってみた〜〜!!

【京まふ2023】いざ行かん!雪ミク スカイタウン!

「完全に原作再現」「公式直々なのがビビる」京まふ2023でのシャングリラ・フロンティア(シャンフロ)のあるツイートからの流れが最高すぎると話題に

【京まふ2023】京都伝統工芸大学校・京都美術工芸大学さんの作品に触れてみた

【京まふ2023】初出展の京都ハンナリーズ

全て表示

2024年度の人気記事

【マンガ・アニメ分野】「ブルーアーカイブ (ブルアカ)」地域周遊型イベント「ブルーアーカイブ ~げにうららか☆京都満喫春の旅!~」開催!(2024年4月16日より順次開催)

【クリエイター支援情報】「京都から日本を見る、世界を広げる」新たな繋がり・機会を生む場となるサロン『Desalon Kyoto』

【アニメ分野公式イベント】期間限定コラボ企画!TVアニメ「有頂天家族」×伝統産業「京友禅」のスマートフォン拭き販売中!(12月26日まで)

【京都国際マンガミュージアム】期間限定!人気テレビ番組「マンガ沼」放送を記念した川島明(麒麟)と山内健司(かまいたち)のオススメマンガ作品紹介コーナー設置中!!(3月17日~5月7日)

【アニメ・映画分野公式イベント】全国巡回ポップアップストア『名探偵コナンプラザ 2024』京都ロフトで開催中!(5月6日まで)

【京都コンテンツ関連情報】200万枚の桜吹雪が歴史ある時代劇セットの最後を飾る!東映太秦映画村にて「夜桜花吹雪」開催(4月7日 20:45~)

【映画分野公式イベント】映画が800円で見れる!?新入生限定サービス「初めてのアップリンク」開催中!(開催期間:~4月30日)アップリンクってどんなとこ?取材記事も紹介!

【京都コンテンツ関連情報】数多くの桜が咲き誇る境内をめぐる!「醍醐の花見」で有名な世界文化遺産「醍醐寺」で特別法要・拝観が開催中!

【クリエイター支援情報】2024年5月開催の「カンヌ国際映画祭併設マーケットMarche du Film」での新進映画プロデューサーおよびIP企画参加募集中!(応募〆切:4月15日正午12時まで)

【クロスメディア分野公式イベント】4月6日(土) コスプレイベント『COSJOY』が京都国際マンガミュージアムにて開催!!モダン・レトロな雰囲気でコスプレを楽しもう!

【京都国際マンガミュージアム】マンガの魅力や奥深さに迫る!?開館17年目にして初の公式ガイドブック刊行!

【クリエイター支援情報】歴史的建造物、近現代建築の空間に展開する写真コレクション!「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」前売チケット発売中!(〆切4月12日)

【クリエイター支援情報】2024/5月開催の「プチョン国際ファンタスティック映画祭」でのプロデューサー養成プログラムおよび現地滞在レジデンスプログラム参加募集中!(応募〆切:4月30日まで) 

【京都コンテンツ関連情報】東映太秦映画村にて次世代小型モビリティ「&brella」の運転体験が出来るアトラクション開催!親善大使として女優/丸りおなさん来村!(4月18日~21日)

【アニメ・映画分野公式イベント】スイーツデザインのかわいい新商品が先行販売!「ポケピース」のポップアップストアが京都ロフトで開催!(4月23日~5月6日)

【クロスメディア分野公式イベント】野外撮影OK!4月28日(日) コスプレイベント『COSJOY』が京都 舞鶴赤レンガパークにて開催!!

【京都国際マンガミュージアム】昔なつかしの紙芝居を今に伝える紙芝居パフォーマンス「えむえむ紙芝居」4月実演者スケジュール公開!

【京都コンテンツ関連情報】「三國幽眠(みくにゆうみん)—勤王漢学者と京都」展関連講演会 「三國幽眠と興正寺・本寂上人について」参加者募集中!(5月25日)

【映画分野公式イベント】学生が力を合わせて盛り上げる!第27回京都国際学生映画祭実行委員会 実行委員募集中!

【京都コンテンツ関連情報】東映太秦映画村にて鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 × 東映太秦映画村コラボ開催決定!(4月20日~6月30日)

全て表示

人気記事ランキング

ついに鶴丸がやってくる!聖地・藤森神社での太刀「鶴丸」(写し)の奉納・展示がまもなくスタート!

10月6日までイベント開催中!【鬼滅の刃 京ノ御仕事】東映太秦映画村でのコラボをご紹介!

京都通になれる!?TVアニメ『京都寺町三条のホームズ』聖地巡礼

「孤独のグルメ」原作者:久住昌之氏、「FFシリーズ」生みの親:坂口博信氏が登壇するセミナー、京都で開催!【10/16・30、参加費無料】

寺町三条のホームズ原作者、望月麻衣先生独占インタビュー&聖地巡礼!

京都通になれる!?TVアニメ『京都寺町三条のホームズ』聖地巡礼 その2

アニメ『有頂天家族』の聖地としても有名な京都の下鴨神社でみたらし祭開催中【07/30まで!】

巡ってわかる、心の距離。TVアニメ『月がきれい』聖地巡礼~前編~

【映画・歴史好き必見】東映太秦映画村の魅力をどどんとご紹介!新選組隊士の殺陣や実写映画『銀魂』等様々なロケが行われているオープンセット、仮面ライダー立像の撮影も可能!

今年は真選組が主役!? 実写版ロケ地の映画村で銀魂イベント再び!京都ブルルン滞在記パートⅡの全貌が明らかに!!

有頂天家族「京巡りスタンプラリー」を一日で巡ってきた!

KYOTO CMEX オリジナル「間違い探し」第1弾『ビットサミット』(「BitSummit 7 Spirits」チケットプレゼント!)

巡ってわかる、心の距離。TVアニメ『月がきれい』聖地巡礼~後編~

【申込開始!】KYOTO CMEX 2018 10周年記念事業:角川歴彦氏と荒俣宏氏による講演&対談を京都で開催!【9/14(金)・無料】

京都通になれる!?TVアニメ『京都寺町三条のホームズ』聖地巡礼 その3

【公式イベント】インディーゲームの祭典10周年となる「BitSummit X-Roads / ビットサミット クロスロード」京都みやこめっせで有観客にて開催決定!

【本日よりチケット販売開始!】大人気の「京まふ」抽選制ステージに応募し忘れて泣かないための全7ステップ

京都市ボランティア・エキストラ登録制度のご案内

『ギークハウス京都東福寺』の管理人を直撃 ギークハウスってどういう人が入居してるの?

【コンテンツクロスメディアセミナー申込み開始!】豪華な講師が勢揃い!~第1回:亜樹直氏、第2回:堀井雄二氏、林克彦氏、第3回:石橋義正氏~

全て表示

カテゴリ一覧

種類別カテゴリ

ジャンル別カテゴリ

年別記事一覧

ページ上部へ戻る