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京都の若手アーティストを支援する寺田倉庫の挑戦。「Unis in Unison 2025: Kyoto Rising Artists Project」探訪レポート
- 2025/12/2
- クリエイター支援情報, ニュース
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2023年に、西京区から京都駅近くへ移転した京都市立芸術大学。その新校舎A棟の6階で、「Unis in Unison 2025: Kyoto Rising Artists Project」が初開催されました。

京都市立芸術大学のA棟
このフロアは、美術品の保存・保管を行う寺田倉庫(株)が運営するレンタルアトリエ。昨年 11月にオープンし、31室の制作空間をアーティストに貸し出しています。
本プロジェクトは、若手アーティストの支援に力を入れる同社が、このフロアスペースを活用した滞在制作と展示を行うもの。京都市立芸術大学にくわえ、京都芸術大学、京都精華大学、嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学と産学連携して生まれた、新たな取り組みです。
制作と展示は2期にわかれ、展示の第1期は11月7~16日。第2期は来年の2月13~19日で、開館時間は13:00~18:00となっています。
第1期の初日に訪問したので、そのもようをレポートいたします。
京都はアートの作家が生まれ育つ場所
6階まで上がってエレベーターを降りると、部分的な垂れ幕で仕切られた広い空間に出迎えられます。

壁にいくつかの作品が見えますが、本来の用途は作家同士や外部関係者らとの交流スペースだそうです。会期中は、大半の椅子・テーブルが一時的に取り払われていました。

この空間を取り巻くように多くのアトリエがあり、そこでもプロジェクトの参加作品が個々展示されています。いずれの作品も、約3カ月かけてここで生み出されたものです。
アトリエを訪ねる前にまず、寺田倉庫の阿食(あじき)裕子さん(TERRADA ART STUDIO 京都 シニアディレクター)にお話をうかがいました。
―― アートにゆかりがある都市が多くあるなか、京都に注目したのはなぜでしょうか?
「京都は、アートの作家が生まれ、そして育つ場所であると捉えています。多くの作家が、この地でスタジオを構えていますし、教育機関も充実しています。都としての長い歴史があり、古くから伝統文化が根付き、文化を大切に育てる土壌もあります。
作家や大学関係者と対話を重ねていく中で、若手作家が制作し続ける環境を整えることが、重要な課題だと認識しました。
そこで、京都の文化に接しつつ、創作活動をする若手作家を支援する目的で、この場を作らせていただきました。そして、より多くの人に若手作家の取り組みを知っていただくよう、また新進作家たちと交流する場として、京都市の4つの大学と連携し、プロジェクトを立ち上げました」
―― 1期と2期合わせ19名のアーティストが参加されています。人選はどのように行われましたか?
「我々や連携する大学からお声がけをしました。人選の基準は大学によってそれぞれで、4大学のいずれかの出身であること、京都で制作を続けてくださる方と限定はしています。
また、今回の展示ではプロジェクト参加者の他に、TERRADA ART STUDIO京都の入居作家も自身のアトリエを公開してくださっています。例えば、LA からいらしたキム・ローズさんもその1人です。短期間ですがレンタルいただいて、作品も展示しています。 この作家さんはLA出張の際に本スタジオを紹介したところ、京都での滞在制作に興味を持たれて来日されました」

キム・ローズさんの作品群
多彩な作風の作品が一堂に
基本的なお話をうかがったところで、阿食さんにフロアを案内していただきました。
約30あるレンタルスタジオは、スペースごとに仕切られており、オープンタイプと扉が付いた個室タイプがあります。ちなみに、契約者以外は立ち入ることができませんが、寺田倉庫の一事業であるアート作品の保管エリアもあるそうです。

第1期で公開された的野哲子さんのアトリエ
作家の何人かが在廊されていたので、声をかけました。1人目は、京都精華大学大学院で日本画を専攻する北村友海さん。巨大な画面いっぱいに、朽ちつつある巨樹の根本が描かれています。
「ここ 4年ぐらい、毎年春と夏に屋久島に滞在し、描いています。この絵は、縄文杉のさらに奥にある高塚小屋付近を散策して見つけた木です。寝袋や食料を詰め込んで山に登って、山小屋で数日寝泊まりしながらスケッチを描くのというのを繰り返しました。これからも当分は屋久島の自然を描いていくつもりです」

屋久島の巨樹の絵を背景に微笑む北村さん

【北村友海「ヒカリ」2025(左)、北村友海「覆われの森」2025(右)】
もうひとかたは、ノルウェー出身で7年ほど前に来日され、京都精華大学で学んだニルセン・テア・ラーセンさん。展示の作品には、言葉では容易に説明できない、モノクロのおぼろな像が浮かび上がっています。
「入学時は油絵を学ぶつもりでしたが、版画に出会ってすごく好きになり、こちらを専攻しました。コントロールできる部分、できない部分があって曖昧になる、シルクスクリーンの技法が特に気に入っています。この作品もシルクスクリーンでして、テーマは睡眠不足です。高校時代から睡眠不足に悩んでいたのですが、眠れない状態が長く続いた後に金縛りになった際に見えたビジョンをもとにしています」

制作途上の作品とともに

【ニルセン・テア・ラーセン「ins_01」2025(左)、ニルセン・テア・ラーセン「ins_03」2025(右)】
最後にご紹介するのは、嵯峨美術短期大学出身の竹田朋葉さん。在学中は日本画を学び、展示作品も日本画の画材が使われています。淡い色を背景に、何本もの細い線が漂うように描かれている、不思議な印象の絵です。
「最近、人物の顔に興味をもち、顔のなかでも好きな部分を選んで、ドローイングの線を組み合わせて作品にしました。ここに展示している数枚の絵は、2カ月かけ同時並行で少しずつ描いていったものです。完成形が決まっていないため、悩みつつ、画面と対話しながら描き進めました。ある作品に取り掛かっているときにふと閃いて、これは別の作品でも活かせるなとヒントを得られることもありました」

竹田朋葉さんと今回手がけた一連の作品

【竹田朋葉「見つめる」2025】
以上、アトリエを見学しましたが、京都の若手作家の熱量と、創作支援に携わる寺田倉庫の意気込みが伝わり、大いに感化されるものがありました。次回の開催が待ち遠しいくらいです。
もし、本プロジェクトに興味を持たれたら、来年2月の第2期の展示を訪問してみませんか。きっと得るものは多いと思います。
・「Unis in Unison 2025: Kyoto Rising Artists Project」公式サイト:https://unis-in-unison.com


