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【BitSummit PUNCH】言語、JRPG、音楽への愛を一本のゲームに。Rice Gamesジュリアンさんが語る『Shujinkou』

京都で開催されるインディーゲームの祭典「BitSummit」。2026年は「BitSummit PUNCH」として、国内外から多くのゲーム開発者やパブリッシャー、メディア、ゲームファンを集めました。500を超える出展者がいた中、筆者がRice Gamesを知ったきっかけは、開催当日の深夜に届いた一通の取材依頼メールでした。スポンサーとして参加しているインディーゲームスタジオからの連絡に興味をひかれ、ブースを訪ねることにしました。
この会社の代表を務めるのは、台湾とアメリカにルーツを持つジュリアン・ライス(Julian Rice)さん。日本語学習とJRPGを組み合わせた作品『Shujinkou(主人公)』を手がけ、現在は続編となる『Shujinkou 2』の開発に取り組んでいます。
Rice Gamesは、なぜBitSummitに、しかも一般のデベロッパー枠ではなくスポンサーとして出展したのでしょうか? そして、『Shujinkou』という作品にどのような思いを込めているのでしょうか? KYOTO CMEXは、BitSummitのco-sponsorとして、イベント参加者の情熱を追い続けています。この記事では、ジュリアンさんと一緒にBitSummitの思い出を振り返りながら、ゲームに込める想いについてお話を伺いました。
Rice Games代表 ジュリアン・ライスさんについて
台湾とアメリカにルーツをもつゲームディベロッパー

ジュリアンさんは現在28歳。台湾とアメリカにルーツを持つゲーム開発者です。2020年にUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を卒業した後、ビズリーチでエンジニアとして勤務しました。その間に東京へ移住し、会社員として働きながら、空いた時間で自身の会社であるRice Gamesを運営していたそうです。
「2024年末に退職し、7年ほどかけて開発したゲーム『Shujinkou』を2025年にリリースしました。現在は独立して活動しています」と落ち着いた口調で話すジュリアンさんですが、その歩みはとてもエネルギッシュです。エンジニアとして働きながら自分の会社を経営し、長年かけてゲームを完成させた、まさにゲームを愛している人です。
ゲーム制作はチームで、世界中に

Rice Gamesの正社員は現在ジュリアンさん一人ですが、開発を一人だけで行っているわけではありません。
ジュリアン:「正社員としては私一人ですが、契約社員として大事にしているチームメイトが20人以上います。チームメンバーは、日本だけでなく、ラトビア、オーストラリア、イギリス、アメリカなど世界各地にいます。イラスト、音楽、シナリオライティング、QA・テスティングなどは専門のメンバーに依頼し、それ以外の多くを僕自身が担当しています」
インディーゲームらしい小さなスタジオでありながら、制作体制はとてもグローバルです。そして、その中心には、自ら手を動かしながら作品全体を見つめる彼の姿があります。
BitSummitで得た成果を深掘り
なぜスポンサーとしての出展を選んだのか?

今回、Rice Gamesは一般のディベロッパー枠ではなく、スポンサー枠でBitSummitに参加しました。
ジュリアン:「スポンサー枠を選んだ理由は、主に締め切りの都合です。ディベロッパー枠だと2025年末までに相当完成したものを出す必要がありましたが、僕たちの状況では間に合いませんでした。スポンサー枠であれば、柔軟に対応できたんです。『出展までに遊べるゲームを作る』という硬い締め切りを自分たちに課すことができ、チームの集中力を高められると考えました」
当日の様子を振り返って

筆者はBitSummit1日目のビジネスデーにRice Gamesのブースにお邪魔しました。当日のブースでは、無料グッズの配布に加え、『Shujinkou』の試遊機と、現在開発中の『Shujinkou 2』のプロトタイプが展示され、自由に遊ぶことができました。開発中だったためバグもあったそうですが、多くの人が温かく受け止め、楽しみながら遊んでくれたとジュリアンさんは語ります。
ジュリアン:「実は、ブースに置いていた大型モニターは、僕の家のテレビなんです。レンタルするより送料の方が安かったので(笑)」
このエピソードからは、限られた予算の中で最大限の見せ方を考える姿勢が伝わってきました。大きな会社のように何でも用意できるわけではないからこそ、工夫する。その現実感もまた、インディーゲーム開発の面白さのひとつです。
ビジネスデーで生まれたコネクション

BitSummitの3日間を振り返り、ジュリアンさんはビジネスデーとパブリックデーの両方で大きな収穫があったと話します。まず、初日のビジネスデーでは、スポンサー枠に開発スタジオがいること自体が、来場者の興味を引いたそうです。
ジュリアン:「『なぜ開発者がスポンサー枠にいるのか』『Rice Gamesとは何者か』と興味を持ってもらえ、本格的な会社としてアピールできたのが良かったです」
スポンサーとして出展したことで、単なる一開発者ではなく、ゲーム事業に本格的に取り組む会社として見てもらえたことが大きな成果だったと、笑顔で語ってくれました。
パブリックデーで得られた励み

一方、パブリックデーでは、来場者の純粋な熱量が印象に残ったそうです。
ジュリアン:「パブリックデーは、とにかく『早くゲームをしたい!』という熱気がありました。おかげさまで前作の売り上げも少し上がりましたが、それ以上にスポンサーとして出展した経験や、名刺交換で得た人脈、そして『Shujinkou 2』への直接的な反応を見られたことが大きな自信になりました」
開発中の作品であっても、楽しみにしてくれる人がいる。今後の開発に向けた大きな励みになり、モチベーションアップに繋がった2日間だったと振り返ります。今回の出展で、ジュリアンさんは当初の目的を達成することができました。彼にとって、BitSummitは新作を披露する場であったのと同時に、会社の現在地を確かめる場にもなっていたようです。
ジュリアンさんの開発する『Shujinkou』について
日本語学習とJRPGを掛け合わせた作品

『Shujinkou』は、日本語がわからない人でも、遊びながら日本語を学べるRPGです。一方で、日本語を知っているプレイヤーにとっては、自分の言語知識を活かして敵を倒していくRPGとして楽しめます。
ジュリアン:「UCLAではコンピュータサイエンスと言語学(ちょっと特殊な分野です!)と、日本の言語と文化を専攻していました。それと、副専攻としてアントレプレナーシップを学んでいたんです。そのすべてを混ぜ合わせて、大好きなゲームという形でアウトプットしたのがきっかけです」
日本語を学ぶための教材ではなく、まずゲームとして面白いこと。そのうえで、日本語の意味や仕組みが自然にプレイ体験へ組み込まれていること。『Shujinkou』は、その両立を目指して作られた作品です。
キャラクターを生きた存在にする

ジュリアンさんが、ストーリーゲームにおいて特に大切にしているものは、キャラクターだといいます。キャラクター制作において、一面的ではなく、多面的な人間味を持たせることを意識していると教えてくれました。
単に「好き」とか「嫌い」だけでなく、なぜその感情を持つのかということを常に考えており、物語のライターが誰の会話を書いても矛盾がないようにしているとのこと。ジュリアンさんがキャラクターを丁寧に扱っているかがわかります。キャラクター同士の関係性がぶれないからこそ、物語に説得力が生まれます。
何十年後でも口ずさめるゲーム音楽を
『Shujinkou』を語るうえでもうひとつ欠かせないのが、音楽です。ジュリアンさん自身も楽器を演奏するため、音楽への理解とこだわりは深いものがあります。彼はゲーム音楽についても、明確な理想を持っています。
ジュリアン:「ゲーム音楽は、プレイした10年後、20年後でも、ふとしたときに口ずさめるようなものであるべきだと思っています。作曲チームとは密に相談しながら制作を進め、前作では158曲、約7時間の音楽を収録しました」
単に場面を盛り上げるためだけではなく、何年経ってもプレイヤーの心に残る音楽を届けたい。開発費の2割は音楽が占めていると言います。インディーゲーム開発にとって決して小さな投資ではありませんが、その想いが『Shujinkou』のサウンドを支えています。
『Shujinkou 2』は、2027年冬の発売を目指して開発中

現在開発中の『Shujinkou 2』について、ジュリアンさんは「前作を遊んでいなくても楽しめます」と話します。日本語版と英語版を同時に発売し、50時間以上遊べる作品を目指しているそうです。BitSummitで披露されたプロトタイプは、まだ開発途中のものでしたが、ジュリアンさんの言葉にはすでに強い覚悟がにじんでいました。
ジュリアン:「忘れられないストーリーと音楽を提供することをお約束します。僕の人生を懸けたパッションを詰め込んだ作品になるので、ぜひ楽しみにしていて欲しいです」
発売時期は、2027年冬ごろを目標にしているとのこと。SNSなどでも進捗を発信していく予定なので、『Shujinkou』の世界が気になる方は、今後の情報にもぜひ注目してください。
ジュリアンさんとRice GamesがBitSummitを通して得た未来

ジュリアンさんがBitSummitに出展した理由は、『Shujinkou 2』を紹介するためだけではありませんでした。 スポンサーとして参加したことで、Rice Gamesという会社のことを知ってもらい、ビジネスのつながりを広げ、そして何より、実際に遊んだ人たちの反応を直接受け取る機会になりました。 開発中のプロトタイプを前にした来場者の声や表情が、彼にとって大きな励みになったはずです。
インディーゲーム開発は簡単なことばかりではありません。限られた人員や予算の中で、バグを直し、バランスを調整し、様々な人と協力して作品を完成まで持っていくには、地道な作業の積み重ねが必要です。 それでも、好きなものを大切にしながら、自分たちらしいゲームを作っていく。その姿勢が、Rice Gamesの魅力なのだと思います。
BitSummitをきっかけに広がった出会いが、『Shujinkou 2』にどんな形で実っていくのでしょうか。ジュリアン・ライスさんとRice Gamesのこれからを、楽しみに追いかけたいです。
関連リンク
『Shujinkou』をSteamで見る→ https://store.steampowered.com/app/1386630/Shujinkou/
Rice Gamesのホームページ→ https://ricegames.net/
『Shujinkou』のX→ https://x.com/ricegames


