- Home
- インタビュー・講演録, クリエイター支援情報, ピックアップ, マンガ, マンガ・アニメ, 京都国際マンガミュージアム展
- 京都精華大学IMRCとZEN大学HARCが連携! マンガやコンテンツを未来へ繋ぐ学術交流協定が締結【イベントレポート】
京都精華大学IMRCとZEN大学HARCが連携! マンガやコンテンツを未来へ繋ぐ学術交流協定が締結【イベントレポート】
- 2026/8/1
- インタビュー・講演録, クリエイター支援情報, ピックアップ, マンガ, マンガ・アニメ, 京都国際マンガミュージアム展
- 20

マンガ・コンテンツ資源の保存・継承に向けた取り組みとして、京都精華大学とZEN大学の学術交流協定が締結されました。2026年7月25日、京都国際マンガミュージアムでこの取り組みの協定式典が開催され、それに合わせて記念講演も行われました。
この記事では、協定式典と記念講演の様子を紹介するとともに、HARCとIMRCの連携によってマンガ文化の保存・研究がどのように発展していくのかを考えます。
IMRCとHARCとは?

今回学術交流協定を締結したのは、京都精華大学国際マンガ研究センター(IMRC)と、ZEN大学のコンテンツ産業史アーカイブ研究センター(HARC)の2つの機関です。IMRCは、マンガ作品や雑誌、原画、関連資料といった「モノ」の収集・保存・活用に関する豊富な知見を持っています。一方、HARCは、コンテンツ産業に携わってきた人々の証言を記録する「ヒト」のアーカイブに力を入れています。
作品や資料だけでは見えてこない制作の経緯や当時の現場の状況を、関係者の証言によって補う。反対に、証言に登場する出来事や作品を、現存する資料と照らし合わせて検証する。このように両機関が連携することで、学生や研究者の相互交流に加え、マンガやコンテンツをより立体的に捉えられる研究基盤の構築が期待されます。
実は、HARC所長の細井浩一さんは、KYOTO CMEXの立ち上げに尽力した人物のひとりでもあります。「KYOTO CMEX (Kyoto Cross Media EXperience)」の名前とロゴは、細井さんの考案によるもの。現在は、HARCの所長とZEN大学の教授を務めるかたわら、KYOTO CMEXの委員として活動をサポートされています。
「モノ」と「ヒト」から「コト」を残す

協定式典では、最初にHARCとIMRCの代表者による覚書が取り交わされました。HARC側からは細井さん(右)、IMRC側からはセンター長で京都精華大学准教授の佐々木美緒さん(左)が出席しました。
この協定の締結により、両者の強みを活かしたコンテンツ研究のさらなる発展が期待されます。京都国際マンガミュージアムが所蔵するマンガ本や関連資料と、HARCが蓄積している関係者の証言を組み合わせることで、単に資料を保存するだけではない、新たなアーカイブの活用方法も生まれていくでしょう。
「ヒト」を記録する「オーラル・ヒストリー」

アーカイブは、「モノ」を保存するだけの取り組みに留まっては、その役割を十分に果たすことができません。HARCは「ヒト」の証言の保存に焦点を当て、関係者の発言を集めた「オーラル・ヒストリー」の収集に力を入れています。作家やクリエイターだけでなく、コンテンツに関わってきたあらゆる人物を対象にすることで、非常に層の厚いアーカイブ資料がまとまっています。
オーラル・ヒストリーは、単なる取材をするのではなく、学術的な一次資料として使用できるよう細心の注意を払って、人物の発言などを集めたコレクションです。資料はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 4.0 国際(CC BY-NC-ND 4.0)の条件に準拠して提供されており、研究目的などに利用可能です。
オーラル・ヒストリーのコレクションは無料で公開されています。詳しくはこちら。
「モノ」と「ヒト」から「コト」を残す

このように、「モノ」と「ヒト」をアーカイブしていくことは、結果的に「コト」の保存に繋がるでしょう。つまり、物理的な資料と様々な人物の発言や行動とが結びつき、無形な「コト」が見えてくると言えます。
これを「文化」という二文字で言い換えるのは単純かもしれませんが、文化は作品だけで成立するものではありません。作品を生み出した人、届けた人、受け取った人、そしてその時代の社会状況まで含めた重層的な営みとして存在しています。だからこそ、「モノ」「ヒト」「コト」を横断的に保存し、相互に参照できる形にすることが、文化資源の継承において重要になります。
ZEN大学の強みは、オンライン大学として培ってきたデジタル技術と教育環境に加え、コンテンツ産業と深い関わりを持つ組織的基盤(KADOKAWAやドワンゴなど)があることです。一方、京都精華大学はマンガ学部を有し、長年にわたってマンガ研究と人材育成を積み重ねてきました。また、京都市との共同事業である京都国際マンガミュージアムを通じ、実物資料の収集・保存・公開にも取り組んでいます。このように、両者の長所を融合させることで、コンテンツに関するアーカイブが充実し、より広い方法で活用されることになるでしょう。
記念講演で語られたアーカイブの今後

協定式典の後には、締結を記念した講演会「「モノ」のIMRC ×「ヒト」のHARC――二つの研究センターが紡ぐ、マンガ収集・管理・活用の未来」が開催されました。講演会では、資料を「集める」「守る」だけでなく、それを研究や教育に「活かし」、次の世代へ「伝える」ためには何が必要なのか、それぞれの専門的な立場から議論が交わされました。
講演会は3部構成で開催されました。基調講演1では、「声を残し、文化を繋ぐ――ZEN大学コンテンツ産業史アーカイブ研究センターの挑戦」と題して、細井さんによるアーカイブの取り組みが説明されました。また、基調講演2は「図書館情報学からみるマンガ教育」と題して、佐々木さんからアーカイブの教育的活用についての実例などが示されました。
最後にパネルディスカッションが開催され、細井さんと佐々木さんに加え、すがやみつる さん(マンガ家/日本マンガ学会会長)、吉村和真さん(学校法人京都精華大学理事長/教授)、小出治都子さん(ZEN大学准教授)が登壇。
開館20周年を迎える京都国際マンガミュージアムの成り立ちや裏話、マンガ研究について、そして生成AIに関する問題など、様々な議論が交わされ、有意義な時間になりました。会場には、ZEN大学と京都精華大学の学生も出席しており、特にZEN大学にとっては、リアルの場での貴重な講義の時間となりました。
京都国際マンガミュージアムについて

京都国際マンガミュージアムは、いつでも手に取れる約5万冊の開架資料「マンガの壁」をはじめ、予約することで閲覧ができる約25万点の閉架資料が保存されています。休日は観光目的で訪れる人も多いミュージアムですが、研究・保存の場として大変重要な役割を果たしています。
また、定期的に企画展も開催し、マンガに関連する様々なトピックを期間ごとに取り上げているのも特徴です。このような企画展の開催も、既存の資料を整理することに加え、新しい資料の発見・調査、そして成果を広く公開するという重要な使命を担っています。
2026年9月1日までは『わたしをすくう エッセイマンガの処方箋展』が行われており、2026年9月17日からは『Mangaと育った子どもたち:ヨーロッパにおけるManga文化の40年』展が、京まふ関連企画として開催予定です。
KYOTO CMEXは、京都国際マンガミュージアムの企画や楽しみ方などを取材しています。詳しくは関連記事をご覧ください。
約5万冊が自由に読める! 京都人が紹介する【京都国際マンガミュージアム】の楽しみ方と見どころガイド
京都国際マンガミュージアムの学芸員を独占取材!「わたしをすくう エッセイマンガの処方箋展」を120%満喫できる”展示の見方”聞いてきた!
おわりに

マンガ文化を未来へ継承するためには、作品や雑誌などの「モノ」を保存するだけでなく、それらがどのような人々によって、どのような背景のもとで生み出されたのかを記録することも大切です。
今回の学術交流協定は、マンガ資料の研究・活用に取り組むIMRCと、コンテンツ産業に携わった「ヒト」の証言を収集するHARCが、それぞれの強みを持ち寄るものです。「モノ」と「ヒト」の記録が結びつくことで、作品だけでは見えにくかった制作現場や時代背景、そして両者が作る無形的な「コト」を、捉えやすくなるでしょう。
また、アーカイブは過去を保存するだけのものではありません。研究や教育に活用され、新たな発見や次の創作につながることで、未来の文化を育てる土台にもなります。機関の連携が、マンガをはじめとするコンテンツ文化の保存・研究・活用をどのように広げていくのか、今後の取り組みに注目です。


